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『天使の翼』第11章(27)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 「……彼女の『決断力』と言えば、すぐに思い出すのが、つい最近、と言っても標準年で一年ほど前に起きた事件があるわ。……今から思えば、その頃から何か政情に不穏なものを感じていたのかも知れない……後知恵なんだけど……今と変わらない嫌な政府なんだけれど、あまりにも慣れっこになってしまって、日常あまりその事を意識しないでいられた、あえて言えば古きよき時代……。その事件は、最初伏せられていて、マスコミにリークしたのは、デラ公女その人だ、という説もあるわ。球状星団中心部の遥かな辺境で、軍の巡洋艦が行方不明になったの。その艦が何故そんなところに行っていたかは、今もって謎のまま――」
 わたしとシャルルは、どうやら語り部の才のあるらしいローラの方へ、思わず知らず身を乗り出していた。
 「――通信途絶の知らせに、参謀本部が捜索隊派遣の方向で具体的な命令を策定していたところ、大公から直々に勅命が下って、捜索活動は即刻打ち切り、関係者への緘口令、マスコミに対しては検閲・発禁、遺族には異例の手厚い保障……どう考えても何かの隠蔽工作としか思えないでしょ?」
 シャルルの目が輝いた。

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