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『天使の翼』第10章(4)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 わたしのを外し終えたマリア=アンナは、細い指で、今度は、シャルルの猿轡を外しにかかった。……自然と手や指が彼の髪や顔に触れる……全く無頓着に外している風を装っていても、わたしの目はごまかせない――彼女、自意識過剰になりそうなのを堪えている。女性なら、見た瞬間、どうしてもシャルルのことを、素敵だとか、キュートだとか思うはずだ……自然な反応だからしょうがない……いけない!なんだかドキドキしてきた。今度の旅……冒険で、シャルルに接近した何人かの女性がいたけれど、彼女は、その中で一番歳が行っていて――わたしやシャルルよりも五、六才上?――、もしかして、一番美しい……わたしは、頭が混乱してきた。
 憎たらしいことに、当のシャルルは、平然とした様子……いや、むしろ気持ちよさそうに、されるがままになっている……自分のときは全然気にならなかったけれど、微かに甘い香水の香りに包まれて……
 マリア=アンナは、外した後、何を思ったのか、シャルルの顔に屑でもついていたのだろう、優しくつまんで取っている――取った瞬間、余計なことをしたと気付いたのか、それと分からぬくらいに、サッと顔に朱がさした――

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