見出し画像

電子棚札の課題とポテンシャル~ダイナミックプライシング、使いこなせるか?~

 日経電子版の記事【家電の価格、随時上げ下げ ビックカメラが「電子棚札」】は、電子棚札について改めて考えさせてくれる好リポートだと思います。



 そこで、まず、電子棚札の課題とポテンシャルを記事などから整理してみると――

▶『電子棚札』の課題とポテンシャル

(1)課題

  ①『営業時間中の売価変更』・・・ネット上の売価変更との最大の相違点
   は、電子棚札を見て商品を買おうとカゴに取ったお客が、すぐにレジ
   に行くとは限らない
、という事です。例えば、商品をカゴに取った
   その5分後に価格が値上がりした場合、そのことに気付いていない
   お客が20分くらいしてレジに行けば、確実にクレームとなります。
   レジで気付かず、帰宅してから価格が変わっていることに気付けば、
   自宅までお詫びにお伺いするなど、さらなる対応が必要となります。
   ダイナミックプライシングと言っても、電子棚札で営業時間中に価格
   を値上げすることには、実際上困難があります。

  
②『紙媒体との併用』・・・電子棚札による売価変更作業の負荷軽減と
   いっても、特に大きく展開している商品などで、A5とかA3など
   大きな紙媒体が付けられている場合は、手作業でそれらも取り換え
   なくては、売価違いとなります。

  
③『販売期限と値下げ』・・・販売期限の迫った商品を値下げする場合、
   電子棚札で売価変更すると、そこにある全ての商品、まだ販売期限
   まで間のある商品まで一括して値下げされてしまうので、値引シール
   や他のシステムでの対応が必要です。


  ④『価格の下押し圧力』・・・自動化プログラムなどで継続的に過度に
   競合価格・ネット価格を意識し続けることには、際限のない価格競争
   のリスク
がありそうです。

  ⑤『IT投資』・・・電子棚札導入には、もちろん投資が必要です。

(2)ポテンシャル

  ①『売価変更作業の負荷軽減』・・・膨大な品揃え、無数の陳列棚が
   あっても、電子棚札であれば、値札の付け替えというやっかいな
   作業から基本的には解放される。逆に言うと、作業の煩瑣な事を
   気にせずに、弾力的な価格政策を実行できる


  ②『売価ミス・クレームの減少』・・・膨大な数の売価変更作業を手作業
   で行う事によるミスのリスクが大幅に軽減
される。

  ③『より創造的な業務への人的リソースの再配置』・・・神経ばかり使う
   大変な売価変更作業から解放され浮いた時間を、接客・売場作りなど
   より創造的な業務に回すことが出来る


  ④『ダイナミックプライシング』・・・競合対策・在庫解消・需給予測・
   カテゴリー割引(特定の商品群のみ割引)・雨の日サービス等々、
   ありとあらゆる価格政策を随時弾力的に実行可能となる。さらには、
   関連商品を価格訴求してまとめ買いを誘発したり、リピート率が
   高く固定客のついている商品を競合に負けない価格設定にするなど、
   きめ細かな価格対応が迅速に継続的に行えるようになる

  ⑤『オプション』・・・電子棚札のスペック次第では、業務的には、在庫
   情報の取得、顧客に対しては、メーカーサイトへの誘導、QRコード
   による詳細な商品情報の提供、デジタルサイネージとしての活用など
   応用が広がる。

(註:メーカーによって、システムによってスペックに違いがあると考えられるので、一般論としてリストアップしてみました。)



 こうしてみると、リアル店舗における電子棚札の活用には、その特性を十分に把握した上での、過度な期待を排除した慎重な運用を前提に、大きく、(1)販売員のストレス軽減による、より創造的な業務の活性化、(2)オプションとしての電子棚札の拡大利用、そして、(3)ダイナミックプライシングのあることが分かります。

 このダイナミックプライシングに内在された『価格の下押し圧力』というネガティブな要素に負けない、効果的な価格運用のノウハウを確立することが、ダイナミックプライシングを使いこなせるようになることが、何よりも重要なのではないでしょうか。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?