『天使の翼』第10章(127)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
わたしが試着してボーっと鏡に見惚れていると――
「そのスカートが売れる日が来るとはな」
店の主人が、いつの間にか傍に来ていた。
「とてもお似合いだ」
わたしは、ごく自然に微笑んだ。
「そのスカートも、あんたみたいな女性に着てもらって喜んでいる……ただ――」
「『ただ』?」
「値札を見たかい?」
いつも、欲しいものを選ぶときには、後から値札を見るわたしは、何の気なしに首をひねって、腰にぶら下がっている値札を裏返してみた――
「ウェッ!」
銀河帝国では、保護国内であろうと、貨幣単位は統一されている。
「70,000ユナイト……」
わたしの獣じみた絶叫――正直言って、シャルルに聞かれて恥ずかしかった――に、主人は肩をすくめた。
「7,000ユナイトでいいよ」
わたしは、口をパクパクさせて、必死に頭を働かせようとした――それでもまだ高額だが、決して手の届かない金額ではない……
「……そ、それじゃ、十分の一じゃない……悪いわ……」
心にもないことを言いながら、わたしの心は、もうとっくに決まっていた――このスカート、もう絶対脱がない。このままはいていく!
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