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『天使の翼』第11章(18)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 しかし、ローラとペンテコステ老とでは、ものの見方に明らかな違いがある。
 一つには、老人が、聖薬による安全保障があるのに、軍備を増強することをいぶかしみながらも、ストレートに大公家の野心を認めていたことだ。それに対してローラは、聖薬による安全保障はゆるぎなく、それ故、大公国の軍拡は、帝国転覆の野心の表れなどではなく、新たな強権支配の為のシステム、枠組み、と見ているようだ。
 もう一つの違いは、老人が、いつも表面に出ている第一公女デラを憎悪の対象にしていたのに対し、ローラは、単刀直入に、サンス大公フィリポスを巨悪と断じている……
 大公国は何らかの手段で聖薬を手中にしている、と見るわたし達は、ローラの軍部に対する見方とは距離を置きつつも、より大公国の支配階層に身近なローラの、大公、そしてデラ殿下に対する突っ込んだ評価を聞いてみたかった。

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