ネットスーパーの未来~店舗型と中央集約倉庫型~
日経電子版の記事【イオンが頼る英オカド ネット生鮮でアマゾンに先行】は、AI・ロボットなどを駆使した物流システムで生鮮ネット通販のプラットフォーマーとしての地位を築く「英オカド」とイオンの提携に関する興味深いリポートです。
自前でネットスーパーを手掛けるイオンが、あえて提携に踏み切る背景には、従来型のネットスーパーの限界がある、と考えられます。
そこで、一般論として、従来からの店舗型ネットスーパーと最新のIT化(AIなど)・自動化(ロボットなど)された中央集約倉庫型ネットスーパーを対比してみると――
▶店舗型と中央集約倉庫型
項目・・・・・・・・・・・・・店舗型・・・・・・・・・・・・・・・中央集約倉庫型
商品の保管場所・・・リアル店舗・・・・・・・・・・・ネットスーパー専用の施設(倉庫)
ピッキング・・・・・・・各売場の店員・・・・・・・・・高速で走行するロボット
顧客毎の仕分け・・・ネットスーパー専従者・・・(上記の)ロボット
+売場からの応援者 *顧客毎にピッキング
*売場からネットスーパーの
作業場に集めた商品を顧客毎に
仕分けなくてはならない。
梱包・・・・・・・・・・・・・人手・・・・・・・・・・・・・・・・・・人手
*将来はロボット化も
配送(ルート)・・・ドライバーの経験・・・・・・AIによる最適化
(註)上記はシステムの一例で、例えば、店舗型において、非効率だが
各担当者が直接顧客毎に集荷する方法もあり得る(特に衣・住関連商品
がなかったり、1フロアの店の場合など)。
上記の対比からも明らかなように、店舗型には数々の非効率がありそうです――
▶店舗型ネットスーパーに見られる非効率
① 実際に営業している店舗でピッキングする為、来店客の邪魔になる
事も(品切れしそうな時、来店客とネットスーパーのどちらを優先する
のか、その商品をサイト上で非表示、在庫ゼロにするのか、などの課題
も)。
② ネットスーパー専従者だけで運用できなければ、人手不足など様々な
要因でただでさえ忙しい中、売場の担当者の応援が必要になり、通常業務
に支障が出るのはもちろん、一日に何回もある配送時間が迫る度に、
精神的な負担は大きい。
③ システムにもよるが、店舗型では、いったん売場から必要な数の商品を
ネットスーパーの作業場に運び、そこから顧客毎の商品をピッキングする
2段階の作業(二度手間)になる。それでも、何フロアもある売場から
顧客毎に商品を集めたり、顧客毎に売場を何往復もするよりはまし。
④ 当然のことながら、人為的なミスで、商品違い・数量不足が発生
しうる。特に、梱包終了後に作業場に商品が残っていたりすると、どの
顧客の分を梱包し忘れたかいちいち箱を開けて確認しなくてはならない、
という悲惨な状況に。
⑤ システムの進化の度合いにもよるが、店舗型では、細分化された地域
ごとにトラックを決めて、そのトラックごとに梱包した商品を振り分ける
所まではIT化できても、ルートはドライバーの経験が頼り。特定地域に
配達が集中した時の修正も必要。
など
こうしてみると、ユーザーにとって利便性の大きいネットスーパーも、従来からの店舗型では、人員的・作業的に様々な非効率・ストレスがあって、中央集約型ネットスーパーの圧倒的な高効率には、利益面も含めて到底太刀打ちできそうもありません。地域的な特性もふまえて、中央集約倉庫型と店舗型を併用するような施策は必然の流れであるのかも知れません。
(追記:ネットスーパーの利便性という事では、配達時間に家で待っていなくても良い、自分から特定の場所、例えばコンビニなどに取りに行くという施策も検討されているようです。下記の記事が参考になります。)
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