『天使の翼』第10章(96)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
「――ええと、話を元に戻すと、俺が大公と身代金の交渉をしている間だけ、24時間に限って、皆の身柄を拘束させてもらう――」
「何故24時間なのですか?」
シャルルだった。
「大公国全域に叛乱の火の手が上がるのを避ける為なら、大公は、俺の要求する金額くらいポンと出すさ。メディアに囚われの長官の姿を流すと脅してやる。それに、こういう事は、時間が経てば経つ程、俺の方に不利になるからな」
「つまり、フランク長官の命は、今から二十四時間で決着がつく、という訳ですな」
完全に自制心をなくしてしまったらしいハーゲンが、馬鹿なことを言った。
フランク長官は咳き込んで、あやうく吐き戻すところだった。
「この星から出すつもりじゃないですね、ミラー?」
「ハハ、さすがに密輸業者の俺様も、余分の聖薬は持ち合わせていないね。皆には、この星の奥地にある某所に明日の24時までいてもらうことになるな」
わたしは、咄嗟に計算していた――明後日午前の巡察官歓迎パーティーには出席できる……でも、馬鹿ね!フランク長官がいないでパーティーが開かれるはずが……それとも、状況を取り繕って何食わぬ顔してパーティーは開かれるのか?――否!それより何より、わたしとシャルルは、大公国の官憲の事情聴取を受けることになるのでは?
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