『天使の翼』第11章(17)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
「大公とその取り巻きどもの為政者にあるまじき残虐性が、公国に住む人々の日々の生活・努力を目に見えない形で蝕んでいる、とも言えるわ……」
彼女は、大きなため息をついて涙をぬぐった。
「ところであなた達恋人同士?」
この唐突の振りに、わたしとシャルルはむせ返った。
見ると、ローラの顔に不敵な笑みが戻っていた。
「……僕らは、姉弟ではないんだ……」
シャルルが、しどろもどろに答えた。
「答えになってないわね……それが答え、ってことかしら」
わたしは、咄嗟に意味のない言い訳をしようとしていたが、彼女に軽く制された。
「――諸悪の根源は、もちろん大公よ。使える聖薬もないのに軍備を増強するなんて、馬鹿じゃない!……それとも、軍産複合体を支配の梃子にしよう、って事なのか……」
わたしは、ラプラスのペンテコステ老人の事を思い出していた。――老人も、大公を頂点とする公国の軍部を諸悪の根源とみなしていた。華美な軍服に税金をかけて国民を苦しめる輩、という訳だ……。
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