人間がロボットに近付くか、ロボットが人間に近付くか?~ロボ同士の会話の本質的な意味とは~
日経電子版の記事【ロボット同士の会話って難しい? セコマ、北大が実験】は、とても好奇心をそそる内容です。異なるメーカーのロボット同士が自然言語で会話するという情景は、まるで手品を見ているようで、子どもならずとも視線が釘付けになるでしょう。
ところが、異なるメーカーのロボット同士が自然言語で会話するというのは、私達の想像する以上の技術的な困難があるようで、記事では、「あらかじめ入力した筋書きどおりに話すだけ」と種明かしされています。そして、当然の疑問として出てくるのが、ロボ同士が自然言語で会話することにどんな意味があるのか?、という事です。
ロボ同士の『会話』と言っても、それは、ロボ同士の『連携』の事であり、ロボ同士の連携であるならば、何も人間の言語を使う必要はないのではないか?そもそも、厳密には、会話しているのはAIではないのか?
そこで、まず、ロボ同士の連携にどのようなパターンがあり得るか考えてみると――
▶ロボ同士の連携のパターン
① クラウドAI(A)⇔ロボA⇔自然言語⇔ロボB⇔クラウドAI(B)
(音声会話)
② クラウドAI(A)⇔ロボA⇔情報交換⇔ロボB⇔クラウドAI(B)
(通信)
③ ロボA⇔エッジAI(A)⇔情報交換⇔エッジAI(B)⇔ロボB
(通信)
④ ロボA⇔クラウドAI(AB)⇔ロボB
(連携調整)
このような連携のパターンから見えてくるのは――
▶ロボ同士の連携の問題点
(1)判断と命令の機能が必要?
仮にロボ同士が自然言語で会話できたとしても、会話の内容に応じた
アクション(行動)を起こすための命令系統が必要。例えば、ロボAが
ロボBに「その皿を取ってください」と言ったとして、ロボBは、①その
指示に従うべきか判断し、②行動を起こす場合は命令を発しなくては
ならない。このことからだけでも、相当難しい問題なのが分かる。
(2)ロボ同士の共通語が必要?
連携するだけなら、情報を記述する共通の形式を設定して、通信で情報
交換することも考えられる。でも、それを会話のレベルにまで引き上げる
となると、最初から自然言語で対処した方が良いかも知れない。
(3)クラウドAIで連携調整?
クラウド上の共通のAIが複数のロボットを管理し連携させることも考え
られる。でも、これでは、ロボ同士の会話で連携するという当初の目的、
簡潔性が失われ、共通のAIないしはロボットのネットワークを構築しなく
てはならなくなる。
ここまで考えてきて気付くのは、近未来の世界で、私達の身近にたくさんのロボットが動き回って、人間とロボットの共生状態が日常的なものとなった時に、ロボット同士の連携は必須な課題であり、そしてその連携が状況にもよりますが人間には分からない通信や言語で行われること、極端に言えばロボット同士の独自言語で行われるようなことは(AIが言語を独自に作ってしまうという問題)、ロボットの暴走という観点からもあってはならない事だ、という点です。
ロボット同士が、無言(通信)で連携したり、独自言語で会話することは、決して人間にとって自然な状態とは言えません。ロボット同士の連携は、原則としては自然言語による音声会話であるべきだと思います。
一方で、人間にとって、機械を人間に似たモノ=ロボットにしようとすることは、ごく自然な展開です。人間がロボットに迎合するのではなく、どんなに技術的な困難があっても、ロボットの方を、ロボットの思考回路=言語の方を人間に近付けるべきなのではないでしょうか。
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