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『天使の翼』第10章(10)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 一つ確かなことは、わたしとシャルルの使命――サンス大公国の謀叛を阻止するという使命は、わたしにとって、一点の曇りもなく正義である。わたしの心に疑念はなかった。
 「お父上――」
 シャルルが言っていた。彼は、どうやら、老人を呼ぶのに『お父上』で通すことにしたらしい……
 「――もう良いではないですか。それより、先のことを考えましょう」
 シャルルは、マリア=アンナの方を見て、軽く頷いて見せた。
 マリア=アンナも、すぐに頷き返して、老人を背中から支えるように、椅子へと座らせた。シャルルとマリア=アンナが、視線だけで意思を交し合うのを見て、わたしは、胸がきゅんとするのを覚えた……
 老人がとつおいつ語ってくれた内容は、わたし達のミッションにも大いに関係がありそうだった。
 老人も属する植民農家は、基本的には、大公国の植民惑星省との個別契約で、植民後5年目からまる20年間、農業収入の10%を植民経費として納めれば、その土地の所有権を政府から譲渡されることになっていた。それ以降は、通常の税負担だけで済むのである。

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