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『天使の翼』第10章(65)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 「この変転極まりない宇宙にあって、滅びることなく連綿と続いていく生命体があるとすれば、そのような生命体は、無数の関門を突破していかなくてはならず、そのような条件を満たす生命体こそは、唯一無二の存在である――というのが、この説の骨子だ」
 このシャルルの博識に、一同は面食らった様子でいる……面食らった、と言っても、余りにペダンチックでよく内容が理解できない、というのではなく、逆に、シャルルの言葉の分かり易さに対してだ。ローラは、顔を赤くしていた。外見だけではない男性に対して、さっきまでのモーションのかけ方はないじゃない……
 「――そして、哲学的には、その条件が何であるかを思考する、という作業が、一つの学問領域になっている」
 「是非聞かせて欲しいわ、シャルル……一体どんな条件なの?」
 「一番分かり易いのは、『神という存在を思考できる存在である』というものだ」
 わたしは、少しばかりドキリとさせられた――シャルルの台詞、そして口調が、吟遊詩人らしさとはかけ離れていたからだ……でも、そう、良く考えたら、こういう大きな話題を自分流の解釈で一席ぶつのは、いかにも漂泊の吟遊詩人らしい、とも言える……もっとも、シャルルは、そういうタイプではない……

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