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『天使の翼』第10章(91)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 「叔父上の発見も君と同じ性質のものだったのだろうか?叔父上と君の探検は、どっちが先だったんだい?」
 シャルルの言葉がわたしの思いを破った。
 「全く分からないわ。……探検自体は、私の方が一標準年位先よ――」
 わたしは、妙に胸騒ぎを覚えた。……シャルルは、何故そんなことを確かめようとしたのか……
 「――文書の中の一枚を読み進めていた時、私は、いきなりガツンと雷にでも打たれたように飛び上がったわ!」
 ローラの話は、佳境に入ったようだ。既にこの話を聞かされているに違いない面々も、身を乗り出すようにして聞き入っていた。
 ローラは、長年の経験から、その文書が第一王朝時代の遭難手続に関わるもので、もしかしたら、遭難した宇宙船の遭難星域情報が含まれているかも知れない、と直感した――もちろん、情報の確度が高くなればなる程、当時の捜索が成功して、遭難船が回収されてしまっている可能性が高まるのだが……むろん、当事者にとってはその方が良い訳で、これは、歴史家という職業に特有のちょっぴり不謹慎なパラドックスである。
 「その文書は断片で、その後どうなったか、の部分は欠けていたわ。私は、その情報の精度が、当時の技術では遭難船を探しきれないほどあいまいで、同時に、今の技術では発見可能なレベルに属している、と直感した訳――」
 その後、彼女は、今はあまり人の行かない球状星団中心部への探険行――往時は、地球型惑星を有する星系を求めて、危険な星団中心部まで探査の手が伸びていた――を語ってくれたのだが、一つだけ触れておくとするなら、宇宙考古学の二大分野、地上遺跡と宇宙遺跡――所謂宇宙の墓場――のうち、彼女のケースは、前者に属していた。彼女の推理した恒星系には――見事と言うしかないが――今は忘れられた地球型惑星が実在した。その時点で、彼女は、大発見を確信した。遭難宇宙船どころか、都市の廃墟、下手をすると、野人化した人類の末裔と出会うかも……

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