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『天使の翼』第10章(92)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 わたしは、固唾を呑んで聞き入っていた。正直、宇宙考古学が、これほど好奇心をかきたてる、ドラマチックなものだとは思っていなかった。
 さすがに、野人は――今でも絶対確実とは言えない。どこかにロスト・ワールドの末裔が潜んでいる可能性は否定できない――発見されなかったが、その惑星で一番大きい大陸の中央高原にある、今は砂漠化した海跡湖のほとりで、ローラの一行は、かなり大規模な、人口十万人クラスの都市遺構と、その郊外にあった砂に埋もれた宇宙港、そこにばら撒かれたような宇宙船の残骸を発見した。
 「……わたしの推理は、殖民団が何らかの理由でその星を遺棄することにした、その最後の船が、離陸に失敗して大破した、というもの。最後の船だったから、誰もおらず、誰も戻ってこなかったんだわ――」
 その星の考古学的調査は、今でも続いているという。生物学・歴史学はもとより、建築学・人類学・古文書学……あらゆる分野を網羅した学際的調査団が結成され、次々と新しい知見がもたらされているそうだ。今では、その星の名をとって、タンズール学なる一個の独立した学問分野が形成され、タンズール学者、タンズール学部なるものがブームとなって一世を風靡している故……

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