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『天使の翼』第11章(22)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 「シャルル――」
 ローラが小さく笑って答えた。
 「――『野心』なんて無いのよ。聖薬による安全保障で守られたこの宇宙で、帝国転覆の野心なぞ抱くのは、狂人だけだわ。そのことは、帝国の側も知っている。つまり、ナショナリズムが高揚しようがしまいが、具体的に政府として方針を出して具体的な行動に出ない限り、民間レベルでの交流にどういう影響が出るかは別として、極端に言えば帝国との関係上どっちでも構わない……もちろん、あくまで仮定の話だけれど、この機に乗じてコスモス・マグナカルタを破棄し帝国から独立しようなんて考えは起こさないことね――全銀河を統一している、ということは、帝国にとって絶対譲れないパラダイムだもの……一つでも例外を認めたら、帝国による平和は破綻をきたすわ。……ちょっと気になることがあるんだけれど、何故か、今年に入ってから、ナショナリズムを煽るような言説が影を潜めている……狡猾な大公のことだから、下手にナショナリズムを煽ると、自分以外の人間、たとえば、デラ殿下に人気が集まるのを恐れてのことかも……」
 前提となる認識が異なると、思わぬ解釈が出てくる。そして、話は、わたし達の聞きたかった所謂内部情報へと入ってきた。

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