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『天使の翼』第11章(40)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 「僕は、オカルト的なものを否定しないよ……体験したことはないけどね」
 シャルルの答えは、わたしには、大体予測のつくものだった。シャルルは、頭が切れるけれど、決して頭でっかちではない。むしろ、感情のひだが細やかで、感受性に富み、好奇心も子供のように旺盛だ。文字通り、何事も『頭から』否定したりはしないはずだ。……かといって似非なものに簡単にだまされるような人でないことは、言うまでもないけれど……
 「デイテは?」
 わたしは、一瞬祖母やその夢のことなどにも思いをはせたが――
 「わたしは、旅の先々で色々なものを見聞きしてきたけれど……そうね、明らかにオカルトといえるようなものを自身で体験したことはないわ、残念ながら」
 ローラは頷いて――
 「これからする話をどう受け取るかは、あなた達の判断に任せる。それは、デラがまだ十代前半の少女の頃のこと――。その時には、もう母君は亡くなっておられて、デラが急に男として育てられだした頃……」
 ローラの語った内容は、わたしのみならずシャルルも初めて聞く話で、精神分析だのプロファイリングだのと言うまでもなく、デラという女性を知るには、欠くことのできない情報だと分かった。

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