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『天使の翼』第10章(88)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 一体ローラは、三千年間古い建物の地下に埋もれていた、誰も気付かなかった隠し部屋をどうやって見付けたのか?
 「……全くの別件で、夢中になって調べものをしていたのよ。ちょうどコーヒーを持って歩いていたんだけど、何かの拍子に躓いたのね……思わず悲鳴を上げたわ!カップは砕けて、見事にコーヒーをぶちまけちゃった。そしたら、何と、そのこぼれたコーヒーが、スーッと消えていくのよ……少なくとも最初はそう見えた。目を凝らして初めて分かったわ。コーヒーは、石造りの床の一見つるつるの表面にあった隙間に、吸い込まれていたの――」
 職業柄、隠し部屋と直感したローラは、軽率には行動に移らなかった――「どうせ三千年間誰にも気付かれなかったんだから、一日や二日どうってことないわ」――。問題は、大公国当局が、どう反応するか、だった。前王朝時代の古文書に正史に反する内容が記録されていたりしたら、たちどころに没収されてしまう……
 ローラの取った方法は、――彼女らしからぬことに――正攻法だった。三日間考えた末、公文書館当局に発見を申告し、守秘義務を100%認める書類にサインするのと引き換えに、調査委員会の副委員長におさまったのだ。

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