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『天使の翼』第11章(6)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 「――グライダー方式で飛ぶんだ。どんなに頑張って羽ばたいたって、あの巨体が空中に持ち上がるはずがないからね――」
 シャルルによると、この生き物、その名も『マウンテン・デビル』は、鋭い鉤爪の付いた逞しい4本の脚と、くねくねと曲がる細長い胴体を巧みに使って、山岳地帯の岩場をものともせず登っていく。そして、断崖絶壁のピークに達するや、枝の先端に辿り着いた甲虫が飛び立つように、空中に身を躍らせるのだという。後は、脚と胴体の間に張った皮膜に、谷間から吹き上げる上昇気流をとらえて、優に小一時間は滑空していられる、という訳だ……実感こそわかないけれど……
 「彼らは、何でそんな面倒なことを繰り返すの?登っては、飛び下り、登っては、飛び下り……」
 「それには、もちろん、生態学的にきわめて優位な理由がある――彼らは、そうやって、アンコーナの山岳地帯に棲息する他の飛行性生物を捕食し、また、優美に飛びながら、番の相手を見つけるのだよ……マウンテン・デビルにとって、飛ぶこと、すなわち、求愛のディスプレイ、ということかな」

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