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『天使の翼』第11章(43)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 命の危険を感じていたのは、何も教育係ばかりではない――他ならぬSSIPの長官自身が恐怖におののいていた。もともと秘密警察の長と言うものは、計り知れない権力を持っていると同時に、あらゆる裏の秘密に通じているだけに、実は最も危険な地位でもあるのである。真の権力者が秘密警察の長官を更迭する時は、穏便な引退など滅多にあるものではなく、『処刑』という言葉が付いて回るといっても過言ではない。文字通りの使い捨てだ。大公家の警護を担当する親衛隊部門は、SSIPの一機関であり、大公の目が教育係の方に執着している間はいいが、いつ雲行きが怪しくなるか分かったものではない……
 SSIP長官が最初にやった事は、デラ公女の担当警護官を全員拘束・拘禁することだった。その後は、例のごとく拷問である。拷問の実際的効果――人は、苦痛を逃れる為にはあること無いこと何でもしゃべる――については権威であるはずのSSIPだが、結局他にいい方法を考えられなかったのだろう。一番厳しく攻め立てられたのは、デラが失踪した夜の当直4名、そして、デラ担当班の指揮官だった……

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