『天使の翼』第10章(63)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
いささかぎょっとしたものの、黙ってれば機転の利かない女と思われかねない、などと馬鹿げた思いがよぎって――
「もし殿下が次の皇帝におつきになったら、マイヤーさんは学術顧問か御伽衆に立候補なさるとよろしいわ」
わたしは、わざと冷たく言った。
ローラは、ちょっと変な目でわたしの事を見てから、すぐにどうでもいいと思ったらしく、シャルルの方に向き直り――
「やっぱりダニエル殿下はやめとくわ……見てるだけじゃしょうがないからッ!」
(!)
ローラの超積極策は、しかし、既に最初の衝撃から立ち直っているシャルルには、全く通じなかった――平然としてテーブルのご馳走に手を出している……ある意味、それも癪に障る――だって、それって、シャルルは、あまたの美女からモーションを掛けられることに慣れっこ、だってことだもの。
どうやら、ローラもそれに気付いたみたいで、また、ちらちらとわたしの顔色を窺っている。
「シャルル、わたしの専門の宇宙考古学の話をしてもいいかしら?」
これは、さて……恥も外聞もなく、180度方向転換だ。
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