『天使の翼』第10章(66)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
「神の属性の最大のもの、少なくともその一つ、と言えば、『不死性』です――」
シャルルは、自分でも気付いたのか、少なくとも口調だけは丁寧語にトーン・ダウンした。
「――人類の永続性を担保するには、神の不死性を獲得するのが、理論上は、最短距離だと言えます。つまり、神について思考できる、という事が、滅亡を免れるための第一歩、前提条件となるのです」
「しかし、既に宇宙が実在……あるのだから、人類は神ではありえませんよね?」
的を射た指摘は、意外な方向――アンドレ・クレー准将からのものだった。
「――宇宙の創造にかかわった存在があったと仮定しても、それは、人類ではなく別の存在であり、既に唯一無二の存在があるのであれば、人類は神には成り得ず、いずれ滅びるのでは?」
穏やかな口調ではあったが、断固たる現実主義だ。
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