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『天使の翼』第11章(24)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 「それと、もう一つ。殿下と大公は、しっくりいってないんじゃないか、という気がするのよ……」
 これは、重みのある情報だった。……大公が非人間的な人物だということは、あくまで情報としては分かっていたけれど――自分の目で判断したわけではない――、その非人間的な感情は身内に対しても向けられているのだろうか?とんでもない悪党が、自分の家庭では、愛情あふれる父であり、夫である、というのはよくあるケースだ。わずかでも人間的なものが残っていることによって、精神のバランスが保たれている……
 「大公に男子の世継はいないよね」
 シャルルが、微妙に会話の舵を切った。
 「そう。公女ばかり三人。デラはもちろん、第一公女よ」
 「デラが女大公としてサンス大公の位を襲う、と認識していいんだね?」
 一瞬の間があった。
 「最初は誰もがそう思っていたわ。でも、ここ数年雲行きが怪しいの」
 「サンス大公国にお家騒動があるとは知らなかった」
 シャルルが、話を引き出す呼び水にしようとでもいうのか、大仰に表現して見せた。

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