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『天使の翼』第11章(20)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 その点、帝国政府の官僚達も、全く同じ思考回路に支配されていることに変わりはなかった。秘密の聖薬ストック、というある意味突拍子もないことを前提として行動しているのは、皇帝陛下、シャルルにわたし、そして、一部情報総省のトップ・クラス位ではなかろうか……。この件に関わっている捜査官・分析官は、ほとんど皆事態の全容を知らされることなく動いているのだ。秘密の聖薬ストックなる概念が一人歩きでもしようものなら、それだけでパニックになりかねない。帝国の対大公国戦略は、公式にはなんら変更も修正もされていないし、大公国の軍備増強傾向にしたところで、世間的には特別注目されている訳ではない。第三世界の軍国主義など特に珍しくもなく、それを強権支配のためのシステムと見るか、突出した軍需が民需を圧迫してかの国の経済的・社会的衰退を早めると見るか、せいぜい解釈の違いがある程度だ……
 正しい見方が政策に反映されなくては、道を誤り、最悪の場合は長い目で見て国を亡ぼすことになる。そして、正しい見方をもたらすのが、まさにわたしとシャルルの使命だった。

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