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『天使の翼』第10章(95)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 この世の中、常にそうであっては欲しくない、と思いつつも、性悪説の原理が支配している部分がある――中には、世の中全てが悪であり、人は皆、所詮利己主義者なのだ、と思っている人もあるだろう……欲望を満たす為に、恐怖と暴力が臆面もなく行使される……
 「――これからの段取りを説明しとこう」
 ミラーが、それこそ臆面もなく語り継いだ。
 「フランクは例外として、後の皆の命は保障する。俺は、人殺しじゃないんでね。こう見えても、俺の神経はまともなんだ――人をあやめるなんざ真っ平だ――」
 「ちょっと待ってくれ、『例外』って何のことだ?」
 フランク長官が、顔面蒼白の呈で聞いた。
 「言葉通りだよ」
 ミラーが、にべもなく答えた。
 「お前さんはどう思ってたか知らんが、俺は、本当言うと、お前みたいなくねくね、ぬけぬけした野郎は大嫌いなんだ」
 フランクは、この裏切り劇に――というか、突然本音の人物評を浴びせられて――目を見開いていた。

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