『天使の翼』第10章(123)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
まだショック状態から抜け切れておらず、正常な判断力が完全には戻っていないのか、ローラが、子供のように駄々をこねた。
「それじゃあ、君とはここでお別れだ」
実際シャルルは、わたしの手を取って立ち上がって見せた。
「……あ、あなた、ここでわたしを置いていけると思って――」
相当に驚いた様子だ。でも、これで、彼女も我に返ったようだ。
「――ごめんなさい。分かりました」
ローラは、猫ちゃんをそっと膝の上から抱え上げて、空いた席の上に寝かせた。
それを見て、わたし達はそろそろと立ち上がったものだ。所詮野生の生き物の鋭い感覚にはかなうはずもなく、猫は、パッチリと目を開け、むっくりと首をもたげた。
「だいじょうぶ、この子にはお別れの時だって分かるはず」
シャルルの言うとおり、小さく手を振って後ずさりするわたし達を、彼女は追ってこようとはしなかった。そのけなげな様子にかえって後ろ髪が引かれる……
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?