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『天使の翼』第10章(64)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 男性陣は、ローラの独壇場には慣れているのか、はたまた、呆れているのか、黙々と酒を酌み交わしている。
 「是非聞きたいな。今は存在しない、絶滅したエイリアンの廃墟とか?」
 「ふふ、話が分かるわね……あなた、帝国から来たのよね?」
 ――あえて注釈を入れるなら、サンス大公国はれっきとした帝国領で、大公国は、絶対的な主権を有しない保護国である。人を、『帝国から来た人』呼ばわりするのは、サンス大公国人に共通のメンタリティーだ……
 シャルルは、口では答えず、肩をすくめて見せた。
 「帝国で一番ポピュラーな知的生命体生活痕といえば、ポート・シルキーズの海底都市ね……わたしは行ったことないけれど、確かに、あれは驚きだわ……でも、一番不思議なのは、いつもこの仕事をしていて思うし、宇宙考古学最大の謎なんだけれど、『何故、この銀河系に、人類以外の知的生命――文明といえるものをもつ生命が現存しないのか?』ということだわ」
 「うーん、率直に言って、それは、僕も時々考える……いや、誰もが感じていることだよね」
 わたしは、直感的に、この命題が、シャルルのお家芸である哲学上の課題であることに気付いた。はたして――
 「――たとえば、一説には、人類は、神の定義に最も近似の生命体であり、かつての地球こそは、この稀有な生き物の揺籃の地となった『天国』そのものである、という事だ」
 「人類以外の知的生命体は、いい線まで行ったものも存在したけれど、全て何らかの瑕疵があって滅びてしまった、という説ね?」
 シャルルは、頷いた。

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