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『天使の翼』第11章(42)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 公爵は、もちろんそんな通り一遍の受け答えを認めなかった――「お前達がそんな観察力のない愚か者の訳がない。そんな馬鹿を自分の娘の教育係にしたと思うか!どんな些細なことでもいい、情報がなければ調べようがないだろう。貴様らはだんまりを決め込んで娘を見殺しにするつもりか!」――その後、真偽の程は定かでないが、公爵はこう付け加えたとか――「お前達は頭がいいから分かるだろう。今お前達を『処刑』したりしたら、娘の精神に大きな害がある……まだ娘が家出したと決まったわけではないが……万が一、娘が遺体で見付かるような事になったら、お前達を考えられる限り恐ろしい方法で、たっぷりと時間をかけて切り刻む」……
 この言葉に、さる美しき侯爵夫人は、失禁した。
 途端に――と言うべきか――情報が溢れ出し、優に一冊の本が書けるほどになった。当然の帰結である。デラが無事に戻ることが、彼らの命をつなぐのである。その日から、彼らの日常に寝食という言葉がなくなった。自殺の恐れすらあったが、全員にSSIPの監視が付いた。事前にデラから何か打ち明けられていた者、現にデラと連絡を取り合っている者がいる可能性――いかにも秘密警察官が考えそうなことだ――がないでもない……

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