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『天使の翼』第11章(38)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 大公自身は、SSIPの暴走をどう見ているのか?無条件・無制限の権力を与えようとしているとは思えない。SSIPを便利な手足として使いながらも、これが何の掣肘も受けずに拡大していくことは、大公自身を脅かすし、余程国軍の方が統制しやすいはずだ……。ここで、わたしはひとつの事実に気付いた。銀河帝国転覆を真剣に成し遂げようとすれば、大公にとって、その主戦力となる国軍も、人民抑圧の装置であるSSIPも、共に必要不可欠である。大公は、両者を競わせて、その上に、超越的存在である、アンタッチャブルな自分を置いているのだ。……わたしは、まだ大公国の政治学の初心者だが、もっと広く、巨大官庁植民惑星省なども含めた、全ての権力機構の上に乗っかって――あるいは、有力な部下同士を競わせて、と言ってもよい――自らの不可侵性を享受する大公の狡猾さを見た思いだ。ただし、そのような不可侵性は、大公自身にカリスマ的な人気、国民の支持があれば磐石だが、そうでないと、少しばかり危ういものがある……。もっとも、フィリポスのような男は、外見的な栄誉などに関心はなく、権力そのものを愛するはずだから、自身の人望のなさなど意に介することはないだろう。

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