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『天使の翼』第11章(49)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 「やはり、彼女は身分を偽って家を出た、と発表したの?」
 わたしは、先を知りたくて、思わず口を出していた。
 「それが――」
 ローラの回答は、最も意外なものだった。
 「――さるレジスタンス組織に、恐れ多くもそそのかされて潜伏している模様、と発表されたのだわ」
 事実とは違うし、背景も省略されているけれど、『潜伏』という現象面は、本当だ……
 「なるほど!」
 わたしには、さっぱりだったが、シャルルは、はたと手を打った。
 「――およそありえない状況を発表して、政府……いや、大公は、本当のこと――公女は他人に成りすまして家出をした、という事を知っているぞ、とシグナルを送ったんだね」
 ローラは、得たりとばかりに頷いた。
 「――しかも、そこには、もし発見された場合、当局は、公女をかくまった者、公女の家出に加担した者を厳しく罰するだろう、という威嚇が込められている。……これを聞いた公女の脳裏に、自分に関係した者が、無実の者も含めて、次々と銃殺されていく様子が浮かんでも不思議はないね」

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