『天使の翼』第10章(128)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
「お嬢さん、ジーンズが好きなようだから一つだけ言っとくと、この70,000って値は、別にぼってる訳じゃないんだ。その位はするのさ」
「……」
「でも、この店は、俺にとって趣味みたいなもの。そのスカートは、あんたに買ってもらうと決めた」
わたしが、心にもない異議を唱えにかかると――
「他の女には断じて売らない」
主人は、渋い声で、静かに、だがきっぱりと言ってのけた。
ここまで言われたらね!
わたしは、思わず満面の笑みになって、気付いた時には、主人の首筋にしがみつき、ほっぺにキスしてあげてた。
「ところで、あんた、吟遊詩人だろ」
その一言は、わたしの吟遊詩人魂にパッと火を点けた。
最近歌ってない……ペンテコステ家で囚われの身になった時に曲想は得たものの、人前では……
(今ここで、主人のために歌うとしよう……そう、兄のことを歌うんだ!)
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