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『おにぎり』の値段~料理の本質は変幻自在~

 日経電子版の記事【おにぎりの「適正価格」 ミシュラン店の問題提起】は、進行するコメ離れの中で一人気を吐く『おにぎり』のあり方、そしてその価格などについて考察した興味深いリポートです。



 そもそも、『おにぎり』という料理の最もオーソドックスなイメージは、作るには炊飯などの手間があるものの、食べる分には、簡単(素手で食べられる)・時短(主食と副食をいっぺんに食べられる)・安価(昼食代の節約、など)・少量(小腹を満たす、など)といったコンビニエントな『お手軽料理』、というものではないでしょうか。

 しかし、これは、『おにぎり』という料理の一ジャンル、カテゴリーにコンビニエントというレッテルを貼ったに過ぎず、本質的には、『おにぎり』は変幻自在どんなモノにでもなれるはずです。

 ――極論すれば、『にぎる』という事では同じ『すし』なども、歴史的な起源は別として、『ご飯』の食べ方としては同じ分類に属すると言えます。

 ――逆に、サンドおむすび『おにぎらず』などは、『にぎる』という工程を『サンド』に変更しただけで、やはり、『ご飯』の食べ方としては同じ分類です。

 ……『おにぎり』・『すし』・『おにぎらず』の共通項を整理すると、①ご飯と具材・ネタを、②食しやすい大きさに、③様々な工夫で一まとめにすることで、その絶妙な食感・食味・見た目などを演出する料理、とでもなるでしょうか。この条件さえ満たしていれば、一般的なコンビニエントというイメージから超越した、どんな『おむすび』があっても、1個1000円を超えるような『おむすび』があっても構わないはずです。……ゴージャスな1000円越えのラーメンや、ホテルやラグジュアリーな専門店で供されるような食材に糸目を付けない何千円もするハンバーガーと全く同じことが『おむすび』に起きたら、どんなに楽しい事でしょうか!

 結局のところ、唯一最大の問題、課題は、そのような革新的、イノベーティブな『おにぎり』が、消費者のインサイトに刺さり、一定の支持を得られるか、継続的な事業として成立するか、そのビジネスモデルの構築にかかっている、と言えそうです。超高額な食材を使った何千円もする『おにぎり』は、すぐにも作れますが、そのような『おにぎり』をどのようなUX(ユーザーエクスペリエンス)の文脈の中で提供するかが問題なのです。



 料理は本質的に自由で変幻自在なものですが、新しく創造された料理がスモールマスな市場として定着するかどうかは、卓越したUXの演出にかかっている、と考えられます。――その値段、価格は、後からついてくるのです。



#COMEMO #NIKKEI

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