『天使の翼』第10章(59)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
この場を完全に仕切っている感のあるローラは、ひとしきり誰はばかるともない笑い声をあげたあと、改めて紹介の労をとった。
「こちらは、この星で、所得番付には載っていないのに、何故か所得トップの人物よ」
「おっと、番付に載ってないのに、なぜ一番と分かるのかね、ローラ」
「それは、あなたのグラン・サンスにある別宅――いいえ、お城と言うべきね、あそこにお邪魔したことが一度でもあれば、簡単に推測できることだわ」
「これは、一本取られた!」
「密輸業者さんが堂々と首府に豪邸を構えていていいのかしら。大人しくしていた方が身のためだと思うけど」
「ははは、合法的な会社を持ち株会社にしているから大丈夫さ。自分でも時々俺は堅気なんだと錯覚することがあるぜ」
男性は、ウィル・ミラーという名の、五十がらみの大男だった。頭はすっかり禿げ上がってスキン・ヘッド。近頃流行りだした眼鏡――宇宙時代の医療技術では無用の長物――をかけているせいか、いかついだけではなく、危ない感じ……
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