『天使の翼』第10章(97)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
シャルルのように、高性能の推理エンジンを搭載していないわたしは、ようやく危機的状況に気付いて――何があろうと、大公国の警察機関の前に出る訳にはいかない――、そっとシャルルの顔を見た。
彼は、ごく微かに頷き返してくれた――当然彼は先を読んでいる――頼もしいと同時に、自分がふがいなく、くやしい……
「ウィル――」
シャルルが、ミラーの精神状態を安定させておこうとでもいうように、親しげ、と言ってもよい位の口調で話しかけた――口調は穏やかでも、内容は過激だったが――
「――僕達を解放するって、それは嘘ですね」
ローラが、ちょっと慌てた顔をしている。
「何だって、シャルル?」
「どうもこうも、僕達を解放したら、あなたが犯人だと分かってしまうのですよ」
ミラーの表情が険を帯びた。
わたしは、嫌な予感に襲われる。
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