『天使の翼』第10章(98)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
「……余計な心配はさせたくないし、事が成就する前に余分な騒ぎを起こされても困るから話しておく――」
皆、身を乗り出していた。
「――俺と子分は、事件の後姿をくらます。……まあ、これは言ってもいいだろう――帝国領内で、新しい顔と名前で商売を始める手筈が整っているんだ。探しても無駄だぜ」
「聖薬庁が乗り出せば、使った宇宙船の航路から辿っていけるんじゃないですか?」
ローラが、もうこれ以上余計なことは言わないで、という風にシャルルの腕をつかんだ。シャルルが、やんわりとローラの指を握って、自分の腕から外させた……二人の指が絡まっているのを見て、こんな場合なのにドキドキしてしまうわたし……
「疑り深いね、君は!」
ミラーが、根負けしたように両腕を広げて見せた。
「分かった、分かった。教えてやるから、頼むから、24時間はおとなしくしててくれ」
ハーゲンとローラが、思わず頷いていた。藁にもすがる思い……
「――遭難を偽装するんだよ」
シャルルが、――そういう事例を知っているに違いない――頷いた。
他の三人は、クレーも含めてホッとため息を吐いた様だ。
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