『天使の翼』第10章(5)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
「さてと――」
老人の咳払いに、わたしは、我に返った。
「あの男、さすがにプロだな――わしの指定した通りの吟遊詩人を連れてきおった……わしが一体どういう要求を出したか分かるかね?」
老人は、主にわたしの方を見ながら言ったのだが――
「第一に、ペアの吟遊詩人。第二に、その二人が、兄弟か、恋人か、とにかく密接な心の結びつきで繋がっていること。第三に、二人は、あやしげな軽い感じではなく、しっかりとした人物と見受けられること。第四に、二人は、ちょっとやそっとのことでは動じない、肝の据わった人間であること」
シャルルが、間髪おかず、待ってましたとばかり、よどみなく答えて見せた。鋭い視線で、老人を見据えながら。
老人は、それこそ肝をつぶしたようだ。――シャルルを侮ることなど、あらゆる意味で問題外である。クールなマリア=アンナも、黒目を一回り大きくしていた……
「……これは、これは、よく分かった――」
ようやく老人の口から出た言葉を最後まで言わさず――
「いや、僕は、単に自分達の特徴を羅列しただけかも知れませんよ――自分達が何かとても嫌なことを強制的にやらされるとは予測せずにね」
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