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『天使の翼』第10章(101)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 「外見からは、僕の端末が政府高官用のものだとは分からない。問題は、脱出する前に回収しなくてはならない、ということだ。……ラプラスの宿に置いてきた物はないかい……寒くない?」
 シャルルが、そっと指先でわたしのむき出しの二の腕に触れた。
 くすぐったかったけれど、寒くはなかった。
 「……君の黒のコートに、大切なお兄さんの写真が入っている」
 「それが……」
 わたしは、こんな時にそんなことを忘れずに気遣ってくれるシャルルの腕に手を添えた。
 「黒のコートのことなら心配ないわ――最先端の生地だから、びっくりするくらい小さく丸められるの。肩掛け鞄にちゃんと入ってる。ただ、いつもはコートに入れっ放しなのに、何故か、お兄さんが可哀相、って気持ちが心を過ぎって、スカートのポケットに入れてきたのよ……それで……」
 「『それで』……」
 「さっき、荷物をチェックされて身体検査をされた時に、端末と一緒に没収されちゃったわ――何か仕掛けがあると思われたのかも知れない……」
 「何とかして取り返そう」
 わたしは、他に複製もあるし構わない、と言ったのだが、彼は聞かなかった。

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