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『天使の翼』第11章(48)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 わたしは、思った。デラにとって、男として育てられることなどは、実は瑣末な問題なのではないか、と。――何故なら、彼女は、もともと男勝りの女性ではないか?そして、いかに男として育てられようとも、デラのような強い個性の人間の女性的な側面が、そうそう簡単に消し去られようとは、到底思えなかった。心理学の教授が「男としての教育」に着目したのは正しいが、デラ本人は、そのこと自体ではなく、そのような接し方をする父への不信・反発を覚えたのに違いない……ひょっとすると、デラは、男のようにして育てられることを少しばかり愉快に感じていたかも知れない。でも、父のことを思うと、心底楽しい気持ちにはなれなかった……
 「大公……政府は、国民にどういう説明をしたんだい?本当のことを打ち明けたの?」
 「政府としては、非常に難しい選択だったはずよ。本当のことを言ってしまったら、公女が、世継である第一公女が、精神的にやんでいる、と受け取られかねない。……極論になるけれど、それこそどこかレジスタンスの組織に捕らえられていたのを救出した、そんな終わり方のほうが好ましいわけよね……それは、それで問題があるにしても……。でも、本当のことを言わないで、一体どうやって彼女を見付けることができるのか……」

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