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『天使の翼』第11章(39)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 それでは、彼はどうするのか?血をわけた娘、デラとセラを、ゲームの駒ぐらいにしか思っていないのか?
 ……
 わたしの心の中で、一つの確信が音立てて形をなした――もし、大公が死病にかかっているとすれば、彼は、間違いなく大勝負に打って出てくる。失うものは何もない。持てるもの全てを、最後の一駒に至るまで投入してくる。……大公は、全てを巻き添えにして破滅しても良い、と思っている……
 「――三つ目は、カリスマ性」
 ローラが、話を先へと進めた。
 「――いまさら、って気もするけれど……一つとっておきのエピソードがあるの。あなた達、オカルトを信じる?」
 突然話の行方が怪しくなって、わたしとシャルルは面食らった。
 ――わたし自身は、吟遊詩人として宇宙を駆け巡っている間に、いろいろと不思議なものを見聞きしてきた。オカルトと言えば、超自然的な存在だが、この宇宙の、大小取り混ぜて、どのようなコミュニティーにも、それぞれの伝承なり伝説が在ると言って差し支えないだろう……。それが、「どこそこで、何々を見た」、と言うたわいもない嘘――あるいは、思い込み――から始まったのかどうかは、誰にも分からない――

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