『天使の翼』第10章(30)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
しばしの沈黙を破ったのは、シャルルである。
「閣下」
「うむ」
「実は、今回偶然にも町でペンテコステ家の息のかかったものに声をかけられ、御前にまかり出でましたが、わたくし共、シャルルとデイテは、明後日の巡察官歓迎パーティーに正式に出演させていただくことになっています」
「なんと!」
「――フィクスエア社の役員の連れとしてです」
「フィクスエア社とな、なるほど、そうであったか……あの会社の手配してくれた資材には随分と世話になっておるぞ……」
そこで、長官は思案顔になったが、つと顔を上げて――
「先にそれを言ってくれてよかった……実は、つい先刻、吟遊詩人を斡旋する、あー何と言ったか――」
「オーバーオーラーですか?」
思わずわたしは、口を挟んでいた。
「そう、それじゃ、オーバーオーラーの男が来おって、私の副官をつかまえて言うには、ペンテコステがそち達を選んだ経緯には不審の点があるとか何とか、訳の分からんことを抜かしていきおったんじゃ」
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