『天使の翼』第10章(7)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
一同「……」
「そして、僕らは、皇帝陛下の使者です」
部屋に重々しい沈黙が垂れ込めた。
二人の他には聞かれてはまずいので、小さく、しかし、はっきりとシャルルは言ったのだ。
……
わたしは、POPSの総支配人の顔を思い浮かべていた。もうずいぶん昔のことのような気がするけれど、老支配人は、わたしが皇帝陛下の御前で歌ったことがある、と言った時、何も疑うことなくそれを信じてくれた……
今回も、シャルルが『皇帝陛下』と言った以上、大嘘吐きか、狂人でもない限り、その言葉には、計り知れない真実がこめられている……シャルルが大嘘吐きに見える?狂人に見える?――
衝撃を受けて心のエアポケットの中に落ち込んでしまったような二人に、シャルルは、にっこりと、とっておきの笑みを向けた。
「このままでは――」
と言って、彼は、上半身をくねらせた。
「――公務執行妨害の現行犯で、お二人をアケルナルまでお連れしなくてはならない!」
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