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『天使の翼』第12章~吟遊詩人デイテの冒険~

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サンス大公国の秘密警察機関SSIPのデビルハンター捜査に巻き込まれたデイテ、シャルル、ローラの一行は、指揮官クラレンス少佐の計らいでハイアンコーナまでパトロールエアカーに同乗させ…
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#湖岸

『天使の翼』第12章(87)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

『天使の翼』第12章(87)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 強く、不思議なメロディーを数小節奏でて――
 一転、静かに、リズミカルに、エスニックなテーマを流していく……エリザの背に乗って、大空を勇躍するイメージ……早く、ゆったり……強く、小さく……
 わたしは、自信のあるギターで存分に聴衆を引き付ける……これだけで、皆はもううっとり……わたしは、音楽の驚き、心揺さぶる力を思いの丈を込めて紡ぎだす!
 そして―—

『天使の翼』第12章(6)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

『天使の翼』第12章(6)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 他に人工物、人影は見当たらない。空を見渡す。何も飛んでない……
 わたしは、もうしばらく待ってから、矢も楯もたまらず、エアカーに向かって走り出していた。わたしは、狭まった視界の中で、全身、自分自身の荒い息遣いと地面を蹴る靴音に包まれた。
 わたしは、どうかしていた。死を連想させる不安がパニックを起こしたのか……。わたしがシャルルに助けられたのだとしたら、あの沈みかけたエアカーにシャルルが乗ってる

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『天使の翼』第12章(5)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

『天使の翼』第12章(5)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 窪地の縁の少し手前まで来て、遥か遠く万年雪を頂いた連山が視界に入ってきた。記憶通り。
 風の音しか聞こえない。
 わたしは、思い切って縁の上に頭半分目から上だけ出した。
 …………
 一つだけ、墜落前の記憶と違う。
 50メートルほど先に、かなり大きな湖が広がっている。波が立っているのか、連山の上の太陽の光がまばゆく乱反射している。
 わたしは身を乗り出した。
 ――逆光の中、湖岸からさほど遠く

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