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パンケーキから塩レモン、熟成肉まで。 平成の食ブームから時代性を見つめる

平成における「食べ物のブーム」を分解して、時代の空気感・特徴を発見できればと思って、「平成の食ブーム 」を平成最後の夏休みの課題としてまとめてみました。

平成は、食べ物を”コミュニケーションツール”に変えた。

先んじて結論を。
平成という時代を通じて食べ物は言葉と同じような「コミュニケーションツール」に仕立てあげられたように思います。
今や私たちは食べ物を胃袋に入れたい!よりも撮りたい欲求のほうが高いはず。世代を問わず共感してくれて、人となりを深く知らなくても「いいね!」を押しやすい食べ物の投稿は、コミュニケーションツールとして優秀なのです。
ちなみに、畑中さんは著書で昭和の各年代を下記のようにまとめています。

70年代の女性誌が料理作りをホビー、食べるのをレジャーに変えたことから出発したとしたら、90年代のメディアはついに食をエンターテイメントに仕立てあげた。食の娯楽化から食情報そのものの娯楽化へ(引用:ファッションフードあります。著:畑中三応子)

インターネットサービスの歴史と並走する、食ブーム

眺めてみてみると、Amebaブログが盛り上がった頃にパンケーキブームが起こり、Instagamが日本に上陸した頃に、作り置きやスキレット、塩レモンやジャーサラダが社会現象を起こしています。
作る・食べる目的が、インターネットサービスの発展によって「自己表現のツール」に拡張されたことがよくわかります。

なお、平成の30年間ってそれなりにLONG!LONG!でして。
パラパラ見ながら最後まで読んでいただけると嬉しいです。
それでは、いってみましょう!

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▶︎1989〜1992 (平成1〜4) 
まだまだ、”バブルの残り香”にたわむれる日本人

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バブル崩壊が’91年。
崩壊の前夜から崩壊翌年まで日本人の行動(心)は未だバブルのまま。(それまでの消費行動を変えるのは至難の業です)
食ブームも昭和時代の延長戦で、未体験の食材や食感のものが次から次へと流行ります。’90にはマスカルポーネが新鮮だったティラミスが社会現象を巻き起こし、翌年にはパリパリ食感のクリームブリュレ、’92にはつぶつぶのタピオカが旋風を巻き起こします(そして今リバイバルしているわけです。若い人は知らないだろうなぁ)。

▶︎1993〜1998(平成5〜10)
デフレ・不景気の薄暗い平成時代へ。
派手な「料理の鉄人」で食のショービズ化が加速。

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バブル崩壊から2年が経過した‘93年。フジテレビで今や伝説の料理番組が誕生します。
とってもベルエポックな番組の「料理の鉄人」
バブルの頃を思い出すド派手な演出。短時間で本格的な創作料理を生み出す料理人はヒーローに見えて、お茶の間を夢中にさせました。
社会では松本サリン事件や阪神淡路大震災が起こり、失われた10年の真っ只中へ。歯をくいしばる空気感を変えるような明るい番組に、国民は惹かれていったのかもしれません。

また、この頃に物珍しいエスニック料理(第一次エスニックブーム)が盛り上がります。
’97にはモスバーガーがナンタコスを発売。インドのナン×メキシコのタコスをMIXするなんて驚きですが、「エスニック料理」として同類項とする感じが、当時のエスニックへの認識を感じさせてくれます。

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▶︎1999〜2001(平成11〜13)
既存菓子の食感を変えて大ヒット →スイーツ2.0 元年に

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欧州単一通貨のユーロや、地域振興券が誕生した’99に、2つの人気お菓子が誕生しました。花畑牧場の生キャラメルと、生チョコです。

これまでは未開拓のスイーツ(パンナコッタやナタデココなど)を掘り漁る時代でしたが、ここから「既存の菓子のアップデート」で日本人を夢中にさせる時代へ突入します。生という食感×キャラメルやチョコレート。このようにして、日本人はお菓子を新しいものに自動アップデートしていきます。

また、この頃元気だったのが「慎吾ママ」。プロのシェフの腕さばきではなく慎吾のマヨチュッチュで2000年代へ突入していきます。
’01にはスターバックスから抹茶フラペチーノが発売され、一蘭の六本木店が開店し、ファミリーマートではファミチキが発売されていきます。


▶︎2002〜2005(平成14〜17)
食物偽装問題連発。安心のために”手作り料理”へ回帰

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’02の雪印牛肉偽装事件、翌年の牛肉狂牛病、’08にはミートホープなどの食べ物偽装が明るみになった頃。
デフレが続き、企業も人も疲れきっていたのかもしれません。市販の商品を疑うようになって家庭(手作り)料理へ心が揺り戻されていたように思います。
1998年3月にサービスが開始されたレシピサイトの「クックパッド」が軌道にのってきたのもこの頃です。'05は家庭用高級だしの「茅乃舎のだし」がブームとなりました。

▶︎2006〜2008(平成18〜20)
アメブロ台頭し、ブロガーが出現。
食事前の撮影する文化がここから芽生え始める。

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2004年にmixiがサービスを開始し、2005年には食べログがスタート。2006年にはAmebaブログが"Web of the Year 2006"ブログサービス部門で1位を獲得し台頭。iPhoneが2008年の6月に発売
この頃から、日本人の食事前の行動は「いただきますの前に写真を撮る」という行動がはじまっていきます。

この頃に日本に上陸したBillsのリコッタパンケーキは、平成を象徴する大ブームスイーツ
と言っても過言ではないでしょう。
ブロガーに撮られることを意識したBillsのパンケーキは3枚のパンケーキの巧みな重ね方、バナナの切り方もすべて同一。
お客さんの多くが写真を撮ることを想定して、ブランディングされたパンケーキだからこそ、たくさんの情報の中で流されず定着されていったのかもしれません。
なお、このパンケーキの登場によって料理を真俯瞰(真上)からの撮影が流行ったり、東京からパンケーキ臭が漂うぐらい様々なパンケーキ店の上陸の火蓋が切って落とされたのでした

<上陸系パンケーキ年表>
2008年 :オーストラリアの有名店「bills」(七里ガ浜)が日本に初上陸
2010年 :ハワイアンパンケーキ「Eggs'n Things」(原宿)が上陸。
2011年 :ハワイアンパンケーキの 「レインボーパンケーキ」(原宿)、「IVY PLACE」(原宿)が登場。
2012年 :カフェカイラ(表参道)、NYの朝食の女王「サラベス」が上陸。ハワイ風メキシカンの「HAW-MEX CAFE」(下北沢)、「デイルズフォード・オーガニック」が上陸。
2013年 :「スラッピーケークス」(新宿)、「カフェ クッチーナ&カンパニー」「ブルックリン パンケーキハウス(原宿)、クリントン・ストリート・ベイキング・カンパニー(表参道)、オリジナルパンケーキハウス(吉祥寺)、シナモンズレストラン(明治神宮前)
参考:Hanako

Billsのパンケーキを撮ることでの充足感。これこそが平成的食ブームの象徴と言えそうです。


▶︎2009〜2010(平成20年〜22年)
草食男子が流行語に。「食のジェンダーレス化」も進む

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2009年の流行語は「草食男子」でした。
このタイミングと同じ年にヒットしたのが「ローソンのプレミアムロールケーキ」。コンビニスイーツの売上を下支えしてきたのがM1、M2の男性層。甘いものが好きだけど、1人で菓子店には入れないという心の訴えをコンビニスイーツが吸収し、巨大市場へ成長していきます。
男性がケーキを食べる。女性が1人焼肉を食べる。男性が、、それまでのジェンダー固有のイメージの壁が少しずつ変わりはじめたタイミングとも言えるのではないでしょうか。


▶︎2011〜2013 (平成23〜24)
女性のアジア旅行が定着。エスニック料理がブームに

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2011年頃から海外の格安航空機(LCC)が相次いで日本に上陸。海外旅行がより身近になりはじめます。
女子旅・週末旅がトレンド化しフューチャーされるようになったのが東南アジア
’00年頃から「冬のソナタ(ヨン様)」で韓流ブームが加熱、収束するのが2011年までとされていて、旅行先のトレンドが韓国から東南アジアに南下していったという感じでしょうか。
東南アジア旅行者が現地で味わった本格スパイシーな料理。アジア料理ファンの増殖によって、日本国内でのエスニック料理のニーズが高まり、本格エスニック料理ブームがじわじわと始まります。


▶︎2012〜 (平成24〜)
スムージーやアサイーボウルなど、
見映えOKのヘルシーフードの百花繚乱時代へ

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ダイエットは人間にとって永遠のテーマ。平成のダイエットは、りんごなどを食べ続ける昭和的なダイエットから作風が変わり、体質・習慣改善を試みる食べ物が受け入れられました。また、そのどれもが見栄えもOK。

2012年には「仲里園子&山口蝶子姉妹」によるグリーンスムージーがブームになり、ハワイ発信のアサイーボウルも日本で人気になりコンビニドリンクなどに派生しました。

この後、ミランダカー様の出現によって、ココナッツウォーター、デトックスウォーター、チアシードなどがフードシーンに登場していきます。


▶︎2014〜 (平成25〜)
Instagram日本上陸。ニトスキやジャーサラダなど、女性の「手芸魂」が インスタで開花する。

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2014年にInstagramが日本に上陸。
昭和時代から外食起点の食ブームが一般ルートですが、インスタの場合は家庭でも気軽に撮影して投稿することもできるので、家庭料理発信のインスタ映え食ブームも巻き起こりました。
”ニトスキ”(ニトリのスキレット)がバカ売れしたのもこの頃ですし、メイソンジャーにサラダを層にして並べるジャーサラダや塩レモンが流行ったり、デコ弁をはじめ、野田ホーローの容器に入れて作り置きしたものを真俯瞰で撮影するのも一大トレンドになりました。

女性の「手芸魂」とも言うべき器用さ・几帳面さが、インスタによって可視化され、評価されて交流が生まれて、インスタ市場は留まることを知りません。

▶︎2016年 (平成28〜)
いきなりステーキやサラダチキンが人気。
糖質オフが定着して、日本人の肉食化がすすむ

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2013年に盛り上がった熟成肉ブーム。それまでは霜降り牛肉が最良の選択でしたが、このブームによって「赤身牛肉を分厚く食べること」の贅沢を日本人は知り始めます。
そして、2016年頃には糖質制限が定着しはじめ「いきなりステーキ」の大ブレイク、2014年に発売されていたセブン-イレブンのサラダチキンの大量喰いへはじまります。

またサラダ専門店が続々デビューするのもこの頃。
日本人はどんどん白米を食べなくなっていきます。

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▶︎2017年〜 (平成29〜)
パクチー、スパイスカレー、バインミー、台湾ブーム。
エスニック料理が日本で深化しつづける

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全世界のグルメが味わえるとされる東京。表層的な取り入れ方だったエスニック料理も、より本格的により深化したものを日本人は求めるようになります。
カメ虫の香りとして嫌がられていたパクチー(コリアンダー)が国民的食材となりバインミーが盛り上がったり、ココイチ的な欧風カレーとは違った、サラサラのスパイスカレーを無印良品で気軽に堪能したり、八角が効いた台湾料理も注目されるようになりました。


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おわりに。
《平成後の食ブーム》は動画映えフードが愛される時代?

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駆け足でご紹介した平成の食ブーム。
もっと扱いたいもの多かったので、また分解して紹介していきたいなと思っています。

なお、平成以後の食ブームとして注目しているのは動画映えフード
動画映えとは、動きがあって魅力的なこと。今流行っているラクレットチーズなんかは、動画映えしますよね。どろ〜んとしたチーズをつい動画モードで録っておきたくなります。
これらに類似する食べ物はチェックしておいたほうがいいかもしれません。


みなさんにとって平成はどんな時代でしたか?
「あれも食べたな、これも美味しかった。久しぶりに食べたいなぁ」そんな風に振り返っていただけたら、これ以上うれしいことはありません。

ああ、まとめて、疲れた。。。
それでは、また。


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