マガジンのカバー画像

本の話

45
運営しているクリエイター

#読書日記

天然記念物「鮎壺の滝」、『ハイパーハードボイルドグルメリポート』など

天然記念物「鮎壺の滝」、『ハイパーハードボイルドグルメリポート』など

2020/09/29(火)
朝、野菜スープ。黒豆・ヨーグルト・ミューズリー。

『ハイパーハードボイルドグルメリポート』(上出遼平/朝日新聞出版)、リベリアの章を読む。
内戦時、多くの子どもが拐われ、子ども兵士にさせられた。銃で目の前の自分の親を殺すように強いられた。
子ども兵士はコカインを与えられ、戦わされた。そのとき、子どもたちは獣の仮面、かつら、ウエディングドレスで仮装したという。『それは“

もっとみる
『音を聴くひと』

『音を聴くひと』

雑誌『アフリカ』をつくっている下窪さんの作品集『音を聴くひと』。
手に入れてからちびちび味わうように読んでいた。

下窪さんにご連絡することがあったので、あらためて読みなおす。
『音を聴くひと』には、エッセイ、小説、それから魅力のひとつである編集後記などが収録されている。

湖だったり、山肌だったり、人間にとっては突然、清水が湧いているところがある。下窪さんのことばはそんなふうに、そこに流れている

もっとみる
わたしをとおりすぎた彼方へクロックムッシュを

わたしをとおりすぎた彼方へクロックムッシュを

2020/01/14
コーヒーショップへお昼を食べに行く。
明け方の地震のせいで眠い。コーヒーをたっぷり飲みたい。

頼んでいたクロックムッシュができあがる。店員さんはわたしの顔30cmの近さで「クロックムッシュお待ちのおきゃくさまー」と叫ぶ。そこにはわたししか並んでいないのに。はいと答えると彼女はわたしを通り越したむこうの彼方を見つめながら「お熱いのでお気をつけくださーい」とまた叫ぶ。なるほどそ

もっとみる
寝ているものは好感度が高いでおなじみ、『晴れた日は巨大仏を見に』

寝ているものは好感度が高いでおなじみ、『晴れた日は巨大仏を見に』

2020/01/12
去年の冬からだらだらと読んだり寝かせておいたりしていた本を読み終えた。

『晴れた日は巨大仏を見に』(宮田珠己/白水社)

巨大なものが怖いねという話に、あるとき集まった人たちで盛り上がったのだ。
ある人は大仏が怖いという。
わたしは巨大な空間に居ることがたまらなく怖い。たとえば、鍾乳洞。水族館の大きな水槽のある広い空間。美術館にあった巨大ウルトラマンの上半身。背骨あたりが冷

もっとみる
おほしさまの飛ぶあたまでスタージョン『ヴィーナス・プラスX』読み終える

おほしさまの飛ぶあたまでスタージョン『ヴィーナス・プラスX』読み終える

2020/01/05
早朝、また頭痛で起きる。頭痛期間が長い。それでも半年前はもっと長く重い頭痛に苦しんだので、それに比べるとかわいいもの。かわいくないけど。かわいい頭痛ってなによ。痛むたびに☆マークでも出るのか。

頭痛の最中にやってはいけない悪癖だがTwitterのタイムラインをざっとスクロールする。頭痛持ちさんが何人か倒れていて、やっぱりそうですよねと納得して閉じた。

処方薬は月に何錠まで

もっとみる
『だれも知らない小さな国』から始めよう

『だれも知らない小さな国』から始めよう

2020/01/01
2020年が来ることはわかっていた。順番どおりに一年ずつ積みあがり2020年になる。わかっていたのに妙な気持ちになる。年数だけがどんどん未来へ行ってしまうのに生活は少しだけ未来であとのほとんどは変わっていない気がして。

2020年最初に読んだのはコロボックル物語シリーズ①の『だれも知らない小さな国』だった。
今年最初に読んだけれど約30年ぶりに読んだ本だ。
大好きな物語。

もっとみる
『ほんのちょっと当事者』青山ゆみこ著

『ほんのちょっと当事者』青山ゆみこ著

それは石堂書店に行ったときのことだった。
三輪舎の中岡さんに、生理ちゃんの読書会をやるうにさんにはこの本が面白いと思いますよ、と勧められて初めて見たのが『ほんのちょっと当事者』だった。中岡さんセレクションの棚は全部買い占めたいくらい興味の連鎖がつながるような書籍ばかり。その中でも知らなかった本のうちの一冊がそれだった。

ローン地獄、児童虐待、性暴力、障害者差別、看取り、親との葛藤…「大文字の困り

もっとみる