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日々是好日・心理学ノート

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#歴史

2023年に読んだ本(3)

2023年に読んだ本の第3弾です。 今回は『自殺の思想史』という本を取り上げてみましょう。 目次まずは目次です。ざっと目次を見てわかるように,過去の人類の歴史の中で,自殺というものがどのように捉えられてきたのか,時代の中で自殺が肯定されたり否定されたりしてきた歴史が描かれています。

研究成果を暗号で発表していた時代

最近,次の本を読みました。 『データ視覚化の人類史—グラフの発明から時間と空間の可視化—』(マイケル・フレンドリー,ハワード・ウェイナー 飯嶋貴子(訳),2021年,青土社)です。 データの可視化さまざまなデータを可視化することは,現在当たり前のように行われていますが,実はそれほど当たり前のことではありません。 アイデアを思いつく前にはあれこれと試行錯誤があり,いまではパソコンですっと作ってしまうことができるグラフでも何でも,昔は大変な思いをしながら工夫をして作成してき

ターマン博士の天才児研究が始まった頃

今回も昔の論文を見てみましょう。『ターマン教授の優秀兒研究計畫』という論文(記事?)です。1922年に発行された,心理研究第22巻に掲載されています。 この論文では,アメリカでスタンフォード・ビネー知能検査を開発したターマンによる,天才児を集めて追跡調査をした研究が紹介されています。 日本でもこのプロジェクトは教科書に書かれていたりして知られています。しかし,この論文ではちょうど研究が始まった当時(1921年開始)に,このプロジェクトの紹介をする記事となっていますので,こ

100年前に軍事に応用された心理学

今回は,1919年に「心理研究」という雑誌に掲載された論文(記事),『軍事に應用された米國の心理學』を紹介したいと思います。この記事では,第一次世界大戦の当時,アメリカ合衆国でどのように心理学が軍事に応用されていったのかが説明されています。 発端1917年4月,国立調査会の中に心理学委員会が設立されました。これは,軍事上に心理学に関する問題が生じたということで,アメリカ心理学会の評議員会に諮り,心理学を戦争に応用する案を考えるためだったそうです。当時の錚々たる心理学者たちが

論文の中で「精神年齢」をさがす

今回は,国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が運営する電子ジャーナルの無料公開システムJ-STAGEを使って,古い論文を検索してみたいと思います。 キーワード今回検索するキーワードは「精神年齢」です。精神年齢という言葉はいまや,日常用語として誰もがなんとなく「考え方が子どもっぽい」「考え方がおとなっぽい」という意味で使っているのではないでしょうか。 しかし,精神年齢はれっきとした心理学用語であり,しかも心理学のなかでは歴史も古い,100年以上前から用いられている言葉

イメージと現実とのギャップ

アメリカ合衆国というと,どのような国のイメージを抱くでしょうか。 「自由の国」「アメリカンドリーム」「フレンドリー」「銃社会」……日本人にとっては,比較的ポジティブなイメージを抱く人も多いように思います。 今回は,『11の国のアメリカ史―分断と相克の400年』(岩波書店)という本の中から一節を紹介したいと思います。 アメリカの歴史を考えるときに,いくつかの地域から考えていくと理解が進むようです。この本ではタイトルのように,11の地域からアメリカの歴史を説明していきます。

首狩り族の背景

学会でアメリカに行ったとき,博物館で人間の干し首が展示されているのを見たことがあります。もうどこの博物館だったか,すっかり忘れてしまったのですけれども。 展示品のなかにいきなり人間の干し首が並んでいると,少し驚きます。また,こんな野蛮な風習があるのかと,つい考えてしまうのですが…… 首切りの歴史今回紹介する本は,『首切りの歴史』(フランシス・ラーソン著,河出書房新社,2015年)です。電車の中で表紙を見せるのをためらって,カバーを掛けて読んだのですけれども。 この本の最

モーツァルト効果の影響力

1993年に,モーツァルトの曲を聴くと「頭がよくなる」のではないか?という研究が行われて,世の中に広く知られることになりました。たぶんこのNatureに掲載された論文のことでしょうか。1ページだけの非常に短い論文(というか記事)です。 音楽心理学ことはじめこのことは,『音楽心理学ことはじめ』という著書の中でも書かれていました。今回はその一節を紹介してみたいと思います。 3つのグループで比較この論文の中では,どんなことが行われていたのでしょうか。本の中の説明部分を引用します

夫婦の幸福に影響する要因を検討した1930年代の研究

心理学者ルイス・ターマン(Lewis Madison Terman)は,スタンフォード・ビネー検査という知能検査を開発したことで知られています。もともとフランスのビネーが作成した知能検査は,精神年齢という指標で知能を表していました。 精神年齢については,ずっと前にも記事にしたことがあります。ネットで検索すると,すっかり知能検査とは関係なくなってしまった「精神年齢」を見ることができるのですが……もともとは知能検査用語ですからね。 90年前の夫婦の幸福ターマンが90年前に行っ

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月経は犯罪につながるのか

今回紹介する本は,『月経と犯罪: “生理”はどう語られてきたか』(平凡社)です。 古代ギリシャ時代以来,「女性が月経時に精神に変調をきたす」という「症例」がしばしば報告されてきたそうです。そしてオーストリアの精神医学者リヒャルト・フォン・クラフト=エビングは,こうした症例を集めて「月経精神病(Psychosis Menstrualis)」として発表します。 この本ですね(amazonにありました)。 この本の中で,月経精神病が高じて犯行に及んだ女性の話が出てくるそうです

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早稲田大学心理学教室の歴史

私の研究室に『日本心理学会五十年史 第1部』(金子書房, 1980年)という本があります。以前,大学の図書館で除籍本扱いになって,廊下に並んでいたのを拾ってきたものです。 ある日ページをめくっていたら,「戦前の各心理学研究室の状況」のセクションのなかに,早稲田大学心理学教室の項目がありました。著者は本明 寛先生です。今回はその内容を紹介してみたいと思います。 明治から大正時代明治15(1882)年に創設された東京専門学校が,早稲田大学の前身です。明治35(1902)年9月

地域のパンデミックの歴史と新型コロナ対応

国によって,新型コロナウイルス感染症への対応の仕方や,人々の反応の仕方には随分違いがあるように思われます。もしかしたら,過去の災害や病気の広がりの地域差が,その地域に生きる人々の振るまい方に影響を与える,ということがあるかもしれません。 そういった現象は,人間に外の動物でも見られるそうです。 たとえば,多くの動物は,住んでいる場所をきれいにして,衛生に気をつけ,他の個体と社会的距離をおいたり,病気の個体を隔離したり集団から追いやったりすることで,病気の治療だけでなく予防的

本の中の優生学 第2弾

今回も,本の中に書かれた「優生学」について,見ていきたいと思います。とりあえず今回は,優生学の創始者であるフランシス・ゴルトンに関する引用からスタートです……。 ゴルトン最初にも書きましたが,優生学の創始者はダーウィンのいとこで数多くの学問に影響を与えた,フランシス・ゴルトンです。心理学もゴルトンの影響を多く受けています。私の研究分野も同じです。でもその一方で,優生学を誕生させてもいるのです。  ゴールトンは,1869年に著した『遺伝的天才』の中で,どんな範囲の身長をとっ

ジングルとジャングルができあがるまで

Jingle-Jangle Fallaciesという言葉があります。日本語にするのはとても難しいのですが……「ごちゃ混ぜの誤謬」とか「ジングルジャングルの誤り」とか。 ジングル・ジャングルこのJingle-Jangle Fallaciesは,英語版のWikipediaにも項目が掲載されています。 短い記事なのですが,次のように書かれています。 ジャングルの方は本来同じものであるのに異なる名前がつけられてしまっていること,ジングルの方は本来異なるものであるのに同じ名前がつ