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論文の中で「精神年齢」をさがす

今回は,国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が運営する電子ジャーナルの無料公開システムJ-STAGEを使って,古い論文を検索してみたいと思います。

キーワード

今回検索するキーワードは「精神年齢」です。精神年齢という言葉はいまや,日常用語として誰もがなんとなく「考え方が子どもっぽい」「考え方がおとなっぽい」という意味で使っているのではないでしょうか。

しかし,精神年齢はれっきとした心理学用語であり,しかも心理学のなかでは歴史も古い,100年以上前から用いられている言葉です。

精神年齢

精神年齢という言葉は,”mental age”の訳語です。以前の記事でも引用したことがあるのですが,自分が使っているパソコンの辞書で「精神年齢」を調べると,次のような意味が出てきます。つまり「知能の発達の程度を年齢であらわした尺度」であり「知能検査によって測定される」ものを精神年齢と呼ぶのです。

いったいどこで意味が変わっていってしまったのでしょうか。それは正直言って,よくわかりません。でもたぶん,言葉から発せられる意味に引っ張られて行ってしまったのかな,と想像します。

もっとも古い文献

さて,J-STAGEで「精神年齢」を検索して,もっとも古くに発行された文献を探してみました。結果はこちらです。

久保良英 (1916). ヴァインランド低能兒學校參觀記 心理研究, 10, 856-864.

久保良英

久保良英は佐賀県出身で東京帝国大学を卒業した心理学者です。米国クラーク大学に留学しており,1929年から広島文理科学大学の教授となっています。この論文(報告?)は1916年に発行されていますので,クラーク大学にいた頃ではないでしょうか。ちなみに当時のクラーク大学には,スタンレー・ホールが初代学長として働いており,心理学も教えていたそうです。英語版のWikipediaには,「心理学の博士課程の学生は民族的に多様であり,初期の卒業生の中には日本人もいました」と書かれています。これは久保良英のことですね。

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