研究成果を暗号で発表していた時代
最近,次の本を読みました。
『データ視覚化の人類史—グラフの発明から時間と空間の可視化—』(マイケル・フレンドリー,ハワード・ウェイナー 飯嶋貴子(訳),2021年,青土社)です。
データの可視化
さまざまなデータを可視化することは,現在当たり前のように行われていますが,実はそれほど当たり前のことではありません。
アイデアを思いつく前にはあれこれと試行錯誤があり,いまではパソコンですっと作ってしまうことができるグラフでも何でも,昔は大変な思いをしながら工夫をして作成してきたのだということがよくわかります。そしてデータの視覚化は,物事の理解を一気に推し進める原動力にもなるのでした。
当たり前のように作っているグラフも,先人たちの知識の上に成り立っているのです。
横取り
この本の本筋とは全然違うことなのですが,ずいぶん昔のことです。科学者たちが自分が最初に何かを発見したことを主張する一方で,その内容を伝えたら横取りされてしまうかもしれない,という状況がありました。
現在でも,アイデアや研究成果の「横取り」については問題になることがあります。私も見聞きした経験が……(それはさておき)。
暗号
そのような状況を避けるひとつの方法が,「暗号」だったそうなのです。
自分のプライオリティを主張したい一方で,秘密をばらしたくはない……そんなときに「暗号」です。でも,その暗号もすぐに解かれてしまっては意味がありません。
ガリレオ
たとえば,ガリレオの例です。
うーん,これはなかなか解くことが難しそうです。正解は……。
今なら,オンライン上に時系列で記録されて改訂できないようになっている,研究の事前登録システムがありますので,アイデアのプライオリティを主張することは容易になりそうです(公開非公開は自由に設定できるので,アイデアを隠しておくこともできます)。もちろんそれはそれで完全なシステムではないのでしょうけれども。暗号を使うよりはいい時代になっているのかもしれません。
それでも,アイデアや研究成果をどう扱うかというのは難しい問題をはらんでいます。いつの時代であっても,研究者につきものの問題はなくならないものなのかもしれません。
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