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心理学がいつ成立したのかには諸説あるかと思うのですが,ひとつは19世紀後半と言えるのではないでしょうか。そして,ある学問が成立すると,次々とそのなかで枝分かれしていくものなのですが,心理学でも同じように,発達心理学や社会心理学や学習心理学や認知心理学と,細分化されていきました。 すると,同じ心理学の中でも交流が少なくなっていく,という現象が生じます。 プロフィールGoogleの学問向けプラットフォームであるGoogle Scholar(グーグル・スカラー)には,研究者のプ
最近,次の本を読みました。 『データ視覚化の人類史—グラフの発明から時間と空間の可視化—』(マイケル・フレンドリー,ハワード・ウェイナー 飯嶋貴子(訳),2021年,青土社)です。 データの可視化さまざまなデータを可視化することは,現在当たり前のように行われていますが,実はそれほど当たり前のことではありません。 アイデアを思いつく前にはあれこれと試行錯誤があり,いまではパソコンですっと作ってしまうことができるグラフでも何でも,昔は大変な思いをしながら工夫をして作成してき
心理学の研究での大きな関心のパターンには何があるのでしょうか。 ◎行動の記述:人間の行動上の特徴を整理して記述する ◎行動の説明:行動の背景を説明する ◎行動の予測:将来の行動を予測する ◎行動の変化:介入や教育によって行動を変化させる 心理学は非常に幅広い学問ですが,パーソナリティ心理学は,認知,感情,動機づけ,行動などの「個人差」を研究する心理学の基礎的な学問分野だと言われます。特に21世紀に入ってからは,ビッグ・ファイブ・パーソナリティなどのモデルによって,私たちの
以前,リサーチクエスチョンについて記事を書いたことがあります。こちらの記事です:『良いリサーチクエスチョンを立てるためには』。実はこの記事は私のnote記事のなかでも,一番読まれているもののひとつになっています。それだけ,多くの人が必要とする話題なのでしょうね。 オススメ本最近,リサーチ・クエスチョンについて,面白い本が刊行されました。『面白くて刺激的な論文のためのリサーチ・クエスチョンの作り方と育て方: 論文刊行ゲームを超えて』です。 よいリサーチクエスチョンを立てるこ
リサーチ・クエスチョンを考えるときに,「まずは先行研究を読んでいきましょう」と指導されることがあるのではないでしょうか。でも,先行研究を読んでいくと「あれもこれも,もうすべて手がつけられていて,何をしたらいいのかわからない」という感覚に陥るという話も,学生からはよく聞きます。 リサーチ・クエスチョン今回も,『面白くて刺激的な論文のためのリサーチ・クエスチョンの作り方と育て方: 論文刊行ゲームを超えて』から,リサーチ・クエスチョンの立て方について考えていきましょう。 ギャッ
面白い研究をおこなうには,どうしたらよいのでしょうか。今回も『面白くて刺激的な論文のためのリサーチ・クエスチョンの作り方と育て方: 論文刊行ゲームを超えて』から,そのヒントを探っていきましょう。 ギャップ・スポッティングこれまでの記事で,リサーチクエスチョンを立てるときによく使われる,ギャップ・スポッティングについて説明しました。これは,先行研究の穴を埋める研究計画の立て方です。 先行研究ではここが押さえられていない,この研究領域は誰も踏み込んでいない,この方法がこの研究
私が博士号の学位を取得したのは,2000年の3月でした。それよりも少し前から,「どんどん博士学位を出していこう」という流れが始まってきた頃です。それよりも前の時代は,学位というのは碩学泰斗に与えられるもので,大学院の博士課程に進学したからといって取得が約束されるようなものではありませんでした(今でも条件がありますので,約束されているわけではありませんが)。 博士課程の増加日本の大学における博士課程の設置数を調べてみましょう。文部科学省のウェブサイトに掲載されています。 大
今回も,ChatGPTを使った「AIチャットくん」に質問をしてみましょう。 AIの登場によって「こんな影響がある」「こんな仕事がなくなる」「仕事の仕方が変わる」なんていう記事がたくさん報道されます。 当のAI自体は,世の中をどのように変えると思っているのでしょうか……いや,「思っている」わけではないのですけれども……。 心理学の研究の場合というわけで,とりあえず「ChatGPTの登場によって心理学の研究はどのように変わっていくのか?」と尋ねてみました。オープンなクエスチ
毎日,膨大な数の論文が世界中で出版されます。非常に限られた範囲だとしても,もはやそのすべてを網羅して確認することは,時間的にも労力的にも不可能な時代になっています。 「こういう研究があるんだよ」「へえ,知らなかった」と,たとえいろいろなことを知っている専門家であったとしても,研究者であったとしても,見逃している情報が非常にたくさんあるのが現代の状況です。 でも,膨大な論文の中からできれば「確実な数本」を確認しておきたいものです。議論の中心になっていて,そこを押さえればおお
私が博士号の学位を取ったのは2000年3月でした。指導教官の退官と同時です。 ちなみに細かいことですが、当時はまだ国立大学だったので、「指導教官」に「退官」という言い方をします。今の国立大学法人では公務員ではなくなりましたので呼び方が変わって、私立大学と同じで「指導教員」に「退職」です。 前の年のゴールデンウイーク前くらいでしょうか。大学院生室にいた私のところに指導教官がやってきて、「いろいろと忙しくしているかもしれませんが、これから半年くらいの間、集中して書けますか」と
卒業研究などの場合に,「研究テーマをどうしよう?」と悩む学生は多いのではないでしょうか。 悩んだときは,AIに決めてもらうというのはどうでしょう。 Chat GPTというわけで,人工知能モデルをベースにしたChat GPTを使って,心理学の研究テーマを考えてもらったらどうなるかを試してみました。 ChatGPTは,誰でも登録するとすぐに使い始めることができます。たった5日間で100万人のユーザが登録したということでも知られています。 ビッグ・ファイブ・パーソナリティ手
世界経済フォーラムが「ジェンダー・ギャップ指数」という指標を発表しています。2022年に発表された数字が,内閣府の男女共同参画局のHPに掲載されています。 日本は……なんと「146か国中116位」だそうです。 大学の場合大学も大学院も,男性に比べて女性の比率が低い,というのが日本の特徴です。 早稲田大学の場合,学部生全体の女性比率は約37から38%くらい,教員の女性比率はわずか19%です。職員の女性比率は41%となっていますが,下のリンク先の表の欄外に書かれているように
治療薬や治療行為の効果を検証することを考えてみましょう。たとえば,風邪をひいたときに薬を飲みます。風邪ですので,放っておいてもたいていは治っていきます。そのようなとき,薬の効果はどのように示されるでしょうか。放っておいて治るよりも,どれくらい早く治すことができるか,ですよね。 もっと重大な病気の治療のことを考えてみましょう。放っておくと死に至ってしまうような病気です。この場合,その治療をすることで,できれば死を免れることができれば最高です。しかし,単に「5か月後に死に至るの
「心理学のアンケートは質問項目が多い」というのは,多分野の研究者からよく指摘されるところです。心理学では,ある構成概念を本当に測定することができているのか,というところに研究の大きな労力を割きます。そのなかでは,信頼性と妥当性を確保して,ある程度安定して測定するために,複数の質問を組み合わせてひとつの概念を測定するということが行われます。 まるで,複数の問題を用意して国語,数学,英語などのテストをつくるようなものです。いや,考え方は全くと言っていいほど同じなのです。 また