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個が輝く社会を生み出すコミュニティ思考【コミュニティ思考を語ろう①】

 Potage代表、コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさです。コミュニティづくりの専門家として、ファンコミュニティづくり、組織づくりのお手伝いをしています。

 さて突然ではありますが、当記事から何回かに分けて「コミュニティ思考」について語っていきます。(あわせて、Voicyで音声コンテンツも公開しているので、もしご興味ありましたらそちらも聴いてみて下さい!)

 複雑性を増す現代社会においては、つながりや共感が新たな価値を生み出す原動力となっていることに異を唱える人はあまりいないかと思います。コミュニティはそれくらい大事な概念になっていますが、いかんせん、体系立てて「なぜ今の時代にコミュニティや、コミュニティ形成に重要なマイン度セットが重要なのか」を語る文章は、あまり存在していないのでは?と個人的には感じています。だったら僕がやろう、という動機で連載コンテンツとしてこの「コミュニティ思考を語ろう」を書き始めました。

 絶え間ない変化と不確実性の時代においては、個々の強みや独自性を見出し、それを集合的な力へと昇華させることで、新しい解決策やイノベーションが生まれます。この基礎となるのが、今回語る「コミュニティ思考」です。僕は、社会が今直面している課題への対応策を見出し、より豊かな社会を築くための鍵が「コミュニティの力」にあると確信しています。このコミュニティ思考に関する論考が遠くない未来に、より個々人や社会の可能性を解き放つきっかけになることを祈りながら執筆するので、どうぞごゆるりとおつきあいください!


多様性が生み出す新しい価値

 僕は、コミュニティ・アクセラレーターという肩書で活動しています。どんな仕事?とよく聞かれますが、一言で言うなら、人や組織が直面する課題を解決するために背中を押し、加速を支援する役割を担っています。特に、大手企業とのプロジェクトにおいて、コミュニティや組織の構築を手助けしています。

 コミュニティづくりの仕事には「会社や組織、プロダクトやサービスが持つ固有の価値が可視化されて、多くの人の共感を呼ぶ存在になってほしい」という想いを持って取り組んでいます。この固有の価値を「個」と表現することがあるのですが、まずは個を可視化していくことを大事にしているのです。

 多くの場合、個は隠れていたり眠っていたりして、表に見えない状態になっていたり、届いてほしい相手に届かない状態になっています。まずはそれを可視化して、個人や組織やサービスや製品の中に眠っている可能性を引き出して、世の中にたくさん存在している「個」同士を混ぜていくことによって、新しい価値創造をするというプロセスこそが、今の社会にとって、とても重要であると考えて居ます。

 僕の会社の社名は「Potage(ポタージュ)」と言います。これはポタージュスープに由来しています。ポタージュは、色々な野菜の個の混ぜ合わせによって、新しい味をつくる料理です。僕は、理想のコミュニティはまさに「個が混ぜ合わさって新しい価値をつくる」ことによって生まれると確信していて、比喩としてこのような社名にしているのです。

 理想のコミュニティは、参加する人たちの「個」が立っていることがとても大事です。しかし、日本的な昭和の組織は「個を打ち消して同質性を強化する」ことによって強みをつくってきました。高度経済成長期のように、それがプラスに働いた時期もありましたが、今は時代が変わりました。不確実性の高い、多様性が当たり前の世の中において大事なのは、「個が他の個を引き立てあい、有機的に混ざり合う」組織です。いい組織であるために、組織がまずは「いいコミュニティ」であることが求められる時代になったのです。

不確実な時代に新しい価値を生み出す「コミュニティ思考」

 このような世の中において大事なのが、社会や組織を構成する一人ひとりのマインドセットです。このマインドセットを僕は「コミュニティ思考」と呼んでいます。

 僕は、2020年の6月に、Peatixの藤田祐司さんと共著で「コミュニティづくりの教科書」という本を出しました。

 本を出す前から、コミュニティづくりに関して数々の企業から相談をうけてきて、本を出した後はますますそれが加速してきました。もちろん、本を出した効果もあるとは思いますが、時代の流れとして「コミュニティの時代が来ている」影響だとも感じています。実際に「急にコミュニティをつくることになったのだけれどどうしたらいいのかわからない」「コミュニティは大事だとわかるのだけどやってみるとうまくいきません!助けて下さい!」といった相談も、この数年、どんどん増え続けています。

 コミュニティは、ビジネスの世界においては新しい概念です。言葉としての定着がはじまったきっかけは、東日本大震災だったと僕は捉えています。SNSの広がりも相まって「コミュニティの力」がクローズアップされ始めたのがそのあたりの時期からです。そこからおおよそ5年くらいかけて、ビジネスの世界にも「コミュニティ」という概念が波及してきました。つまり、一般的に「コミュニティが仕事になる」状態が社会にやってきたのは、つい最近のことであり、コミュニティづくりは「新しい仕事」なのです。

 結果「コミュニティを仕事にしている」人たちは増えてきました。ただ一方で「コミュニティづくりは自分のキャリアにどんな役に立つのだろう」という不安を感じる方もいるかもしれません。また、コミュニティづくりのノウハウはあまり体系化されていない分(特性的にもどうしても属人性が出やすくはなります。傾向としての話ですが)手探りで仕事をしている人たちが多く「自分の仕事はこれで正解なんだろうか」という不安を抱える当事者も、これまた増えているのが現状です。

 ただ僕は、コミュニティを仕事にしている人たちの持っている知見や経験、そして何よりも体現しているマインドセット=コミュニティ思考は、この不確実な時代を生き抜くにおいて大事な指針になるものだと確信しています。コミュニティ思考は、持っている人たちに、自分自身の行動の指針をもたらして、迷わず行動し続けられる自己をはぐくみます。また、周りと手を取り合いながら解決策を見出し、人と一緒に新しいコトを起こして、困難を乗り越えていく、行動の継続性をもたらします。そしてこれは、コミュニティを仕事にする人だけではなく、ありとあらゆるビジネスパーソンに今の時代に必要とされるマインドセットでもあるのです。

 ということで前置きが長くなりましたが、COMEMOでは、このコミュニティ思考についてのお話を数か月かけてまとめていこうと思います。次回は、コミュニティ思考の3原則の1つ目「ビジョンを行動基準にする」、こちらの解説をできればと思っております。

コミュニティとビジネスの結びつきが更に強まっています。この記事の事例も象徴的ですが、大手企業もコミュニティ施策に力を入れる時代です。

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