見出し画像

ひきこもり初日

いつもどおり6時に目覚めて、トイレに行ったついでにリビングのエアコンをつけて、「朝に聴くクラシック」を流しながら再びベッドにもぐりこんだ。
ウトウトしたいのだけれど、夢を見るのが怖いからしない。
なんとはなしに音楽を聴く。

通勤のときは30分、リモートのときは1時間、無為を楽しむ。
休みの日は何も制限がない。
どこからともなく「何もしないでいるのはもったいない」という気持ちが湧き上がる。
いったい何をもったいながっているのか。

怠惰を罪として自らに振りかざした正義の剣を、別の自分が真剣白刃取りのように寸でのところで受け止める。
そうしてヘラヘラと嗤ってパジャマを脱ぐ。
いま脱いだパジャマと見分けがつかないような部屋着に着替えて、怠惰の場所をリビングに移す。

フレンチポップをランダムに流しながら、リビングで歯を磨く。
部屋が涼しくなると、温かい珈琲が飲みたくなる。
豆を挽く。
ソーセージを茹で、目玉焼きを焼く。
焼きすぎたトーストをかじりながら、noteをめくる。

不登校だったお子さんが、山村留学した学校で笑っている描写があった。
ちょうど好きな曲が始まったところだったから、不覚にも涙が出た。
ああ。
私の心が振られている。
そしてカラカラと音がしている。

濃い目に煎れた珈琲が苦い。
苦くて、とても美味しい。

写真は夏のアンティーヴ。
もう2度と行くことはない。

秋になったら別の海を見に行こうと思う。
それまでのんびりひきこもる。
部屋にはまだ蝉の声は届いていない。


読んでいただきありがとうございますm(__)m