あすな

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ヴァイオリニスト/ラジオパーソナリティー AuDeeにて「あすなのいろはおと」配信中 「あすなのいろはおと」内で取り上げた百人一首をより深く掘り下げた解説・手書き原稿・おまけ音声をマガジンにしています。

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『怪物』を観てきて思ったこと。

少し前のことだけど、『怪物』を見てきた。 小学校の頃の先生を思い出した。 作品の中では 「小学校の時の先生なんて覚えてないでしょ」 と言われていたが、私は1年生から6年生まで、担任の先生のフルネームも顔もばっちり覚えている。 そして、「大人は信用ならない」ということを強く思ったのも、小学校の時が初めてだった。 私は小学校の頃それはまぁ拗らせていて、思い出すのもしんどいくらいにはさまざまなことがあった。 先生方としても、所謂扱いにくい、厄介な子供だっただろうなと今では思

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      #102手書き原稿

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      • 『百敷や 古き軒端の しのぶにも なほあまりある 昔なりけり』順徳院

        《意味》 この宮廷の荒れた古い軒端に生えている忍草を見るにつけても、やはりいくら偲んでも偲びきれない、栄えていた昔の良き御代だなぁ。 小倉百人一首最後の締めくくりは、華やかだった時代を懐かしむ、哀しき帝の一首です。 この歌の作者・順徳院は、承久の乱を起こした後鳥羽上皇の息子。朝廷から鎌倉幕府へと権力やお金が移りゆき、日本の最高位でありながら思うままに世を動かせない、そんな中で帝位についた方でした。武士から貴族に、幕府から朝廷にと権力を取り戻すために後鳥羽上皇が起こした承久

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          #101手書き原稿

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        『怪物』を観てきて思ったこと。

          『来ぬ人を まつ帆の浦の 夕凪に 焼くや藻塩の 身もこがれつつ』権中納言定家

          《意味》 いくら待っても来ない人を待つ私は、松帆の浦で夕凪の頃に焼かれて焦げる藻塩のように、切なさで身も焦がれる想いでいるのです。 待っても待っても来てはくれない恋人。来ないとわかっていても待ってしまう。ただあなたに会いたいと願う、祈りの一首です。 この歌の作者・藤原定家は、今更ご紹介するまでもなく、この小倉百人一首の撰者。父である藤原俊成の「幽玄」という歌風を継ぎ、そして「歌には深いこころと高い風姿、芸術的な美があるべきである」という理念「有心体」をとなえました。 「

          『来ぬ人を まつ帆の浦の 夕凪に 焼くや藻塩の 身もこがれつつ』権中納言定家

          『玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば 忍ぶることの 弱りもぞする』式子内親王

          《意味》 我が命よ、絶えるならばいっそ絶えてしまえ。このまま生き永らえていたら、秘めた恋心を隠す力が弱まって想いが外に出てしまうかもしれないから。 「秘めたる恋」 決して他人に知られてはならないのに、募る恋心がとめられない。このままでは隠しきれなくなってしまうから、いっそのこと死んでしまいたい。 静けさの中にある熱烈な恋の想い。小倉百人一首の中でも1、2を争う人気の高い一首です。 この歌の作者・式子内親王は「恋の許されない立場」の方でした。帝の娘として産まれ、神聖なる存在

          『玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば 忍ぶることの 弱りもぞする』式子内親王

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          #99手書き原稿

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          #99手書き原稿

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          『心あてに 折らばや折らむ 初霜の 置きまどわせる 白菊の花』凡河内躬恒

          《意味》 初霜でそこらじゅう真っ白になってしまって、白菊の花が見分けがつかなくなってしまった。当てずっぽうに折れるなら折ってしまおうか、この真っ白な中の白菊の花を。 真っ白に霜の降りた中に咲く白い小菊。張り詰めた空気の中に、美しい光景です。 この歌は中国からの影響を多く受けた一首です。 菊は中国から渡来した植物で、この歌が入っている古今和歌集の頃に歌に詠まれるようになりました。今よくイメージされる大輪の菊ではなく野辺に咲くような小さな菊、色も白か黄色に限られていたそうです

          『心あてに 折らばや折らむ 初霜の 置きまどわせる 白菊の花』凡河内躬恒

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          #98手書き原稿

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          『淡路島 かよふ千鳥の 鳴く声に いくよ寝覚めぬ 須磨の関守』源兼昌

          《意味》 淡路島から飛んでくる千鳥のもの悲しげに鳴く声に、いったい幾夜目覚めたことだろうか、この須磨の関の番人は。 旅先での孤独な夜明け。冬の寒さ、荒涼とした海の景色と共に迫り来る、淋しさとあたたかさの一首です。 この歌の作者・源兼昌は生没年含め詳しい生き様は不明で、ただこの歌でのみ後世に名を残しているとも言えます。 誰もが思い描きやすい情景、口ずさみやすいリズム。小倉百人一首の中でも人気の高い歌のひとつです。 辻占売りという、江戸時代に交差点でおみくじを売っていた子供

          『淡路島 かよふ千鳥の 鳴く声に いくよ寝覚めぬ 須磨の関守』源兼昌

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          #97手書き原稿

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          #97手書き原稿

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          『憂かりける 人を初瀬の 山おろしよ はげしかれとは 祈らぬものを』源俊頼朝臣

          《意味》 つれないあの人を振り向かせたいと初瀬の観音様にお祈りしたのに。初瀬山の山おろしよ、こんなに激しく吹くように、あの人がますます冷淡になるようにとは祈らなかったのに。 叶わぬ恋。振り向いてほしいと祈ったはずなのに、ますます嘆きが深くなっていく、絶望の一首です。 この歌は「祈れども逢はざる恋」というお題で詠まれた一首です。神様に祈っても叶わない恋、という難しいお題の中で、テクニックを駆使しつつ巧みに作られました。

          『憂かりける 人を初瀬の 山おろしよ はげしかれとは 祈らぬものを』源俊頼朝臣

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          #96手書き原稿

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          『朝ぼらけ 宇治の川霧 絶えだえに あらはれ渡る 瀬々の網代木』権中納言定頼

          《意味》 冬の夜がほのぼのと明けてくる頃、宇治川の川面一面に立ち込めていた川霧があちらこちら途切れ始め、その合間合間に川瀬の網代木が次々と現れています。 いよいよ始まる冬。白々と、ほのぼのと明けていく、その朝の情景を閉じ込めた美しい一首です。 華美な装飾も例えもなく、ゆったりと、ただし確実に流れゆく時間を31文字に込めた歌。 思い出されるのは第93回で扱った「真木の葉に」の、秋の夕暮の一首。その際も水墨画のようなというお話をしましたが、この歌も墨で描いたような情景がまぶた

          『朝ぼらけ 宇治の川霧 絶えだえに あらはれ渡る 瀬々の網代木』権中納言定頼

          『契りおきし させもが露を 命にて あはれ今年の 秋もいぬめり』藤原基俊

          《意味》 約束してくださったあなたの言葉をただ頼みにして生きてきたのに、今年の秋も虚しく過ぎていくようです。 相手のつれない態度、守られない約束を責める。 ありがちなお話と思いきや、その心は意外なものでした。 この歌の作者・藤原基俊は藤原道長のひ孫です。名門の生まれでありながら、それほど出世できないまま人生を終えた人物です。 さて、そんな基俊が詠んだ「守られない約束を責める歌」。その約束、恋にまつわるのもかと思いきや、なんと息子に関するものなのです。

          『契りおきし させもが露を 命にて あはれ今年の 秋もいぬめり』藤原基俊

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          #95手書き原稿

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          #95手書き原稿

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