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『朝ぼらけ 宇治の川霧 絶えだえに あらはれ渡る 瀬々の網代木』権中納言定頼

《意味》
冬の夜がほのぼのと明けてくる頃、宇治川の川面一面に立ち込めていた川霧があちらこちら途切れ始め、その合間合間に川瀬の網代木が次々と現れています。


いよいよ始まる冬。白々と、ほのぼのと明けていく、その朝の情景を閉じ込めた美しい一首です。

華美な装飾も例えもなく、ゆったりと、ただし確実に流れゆく時間を31文字に込めた歌。
思い出されるのは第93回で扱った「真木の葉に」の、秋の夕暮の一首。その際も水墨画のようなというお話をしましたが、この歌も墨で描いたような情景がまぶたに浮かびます。

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